働き方変革 事例集

株式会社コミュニティリンク:地域連携型多拠点ワーク推進で実現した多様な働き方と企業価値向上事例

Tags: 多拠点ワーク, 地域連携, リモートワーク, エンゲージメント, 採用戦略

はじめに

近年、多様な働き方の選択肢として、場所にとらわれないリモートワークや、複数の拠点を活用する多拠点ワークへの関心が高まっています。特に、都市部に本社を置く企業にとって、地方での雇用創出や地域社会との連携は、企業価値の向上と新たな事業機会の創出にも繋がる可能性を秘めています。

本記事では、地域社会との積極的な連携を通じて多拠点ワークを推進し、多様な人材の活躍と企業全体の活性化を実現した株式会社コミュニティリンクの事例をご紹介いたします。同社がどのように取り組みを進め、どのような課題を克服し、どのような成果を上げたのか、その具体的なプロセスと結果を詳しく見ていきましょう。

多様な働き方導入の背景・目的

株式会社コミュニティリンクでは、多拠点ワークを含む多様な働き方の推進を検討するにあたり、主に以下の課題意識と目的がありました。

具体的な取り組み内容

これらの背景と目的を踏まえ、株式会社コミュニティリンクでは、以下のような具体的な取り組みを進めました。

  1. 地域連携型サテライトオフィス網の構築:
    • 複数の地方自治体や地域企業と連携協定を締結し、既存施設(廃校舎活用、遊休オフィススペースなど)を改修・活用したサテライトオフィスを複数拠点開設しました。
    • サテライトオフィスは、単なるワークスペースではなく、地域住民や地域企業との交流スペース、イベント開催場所としても機能するように設計しました。
  2. 多拠点ワーク制度の設計と運用:
    • 従業員が自宅、本社オフィス、各サテライトオフィス、特定の承認済みコワーキングスペースなどを柔軟に選択して勤務できる多拠点ワーク制度を導入しました。
    • 制度利用のための申請プロセスをオンライン化し、利用規程(利用頻度の上限・下限、費用補助ルールなど)を明確に整備しました。
    • 地域に一定期間滞在して働く「ワーケーション」の促進も制度内に含めました。
  3. 地域交流プログラムの推進:
    • サテライトオフィス利用者が地域住民と交流できるイベント(地域の祭りへの参加、特産品フェアなど)を企画・実施しました。
    • 従業員が持つスキルや知見を活かして地域課題の解決に貢献するプロボノ活動を奨励・支援する仕組みを設けました。
    • 地域の企業や団体との合同勉強会、セミナーなどを開催し、ビジネス面での交流も促進しました。
  4. ITインフラとセキュリティ対策の強化:
    • 全従業員が場所に関わらず円滑に業務を遂行できるよう、高速なVPN環境の整備、クラウドベースの共同作業ツールの導入、Web会議システムの全社展開を行いました。
    • 多拠点・リモート環境下での情報漏洩リスクに対応するため、多要素認証の導入、デバイス管理ルールの徹底、従業員向けのセキュリティ研修を定期的に実施しました。
  5. 人事制度とマネジメント手法の調整:
    • 成果を重視する評価制度への移行を段階的に進めました。
    • 多拠点・リモート環境での適切な労務管理(勤怠管理、健康管理)のためのガイドラインを作成・周知しました。
    • マネージャー向けに、リモートチームマネジメント、オンラインコミュニケーション、成果評価に関する研修を必須で実施しました。

導入プロセス

株式会社コミュニティリンクの多拠点ワーク導入プロセスは、以下のステップで進められました。

  1. 企画・検討フェーズ(約6ヶ月):
    • 経営層直轄のワーキンググループを発足。
    • 国内外の先進事例調査、従業員へのアンケート・ヒアリングによるニーズ調査を実施。
    • 制度設計の基本方針、候補地域の選定基準を策定。
    • 一部の部署で小規模なトライアル実施を計画。
  2. トライアル実施フェーズ(約4ヶ月):
    • 選定された2地域のサテライトオフィス候補地にて、一部の部署・従業員(約50名)が試験的に多拠点ワークを実施。
    • 利用実態、ITインフラの課題、地域との連携における課題などを収集・分析。
    • トライアル参加者およびそのマネージャーからのフィードバックを収集。
  3. 本格導入フェーズ(約8ヶ月):
    • トライアル結果を基に、制度設計、規程類、IT環境を改善。
    • 地域自治体・団体との正式な連携協定を締結し、サテライトオフィスを開設(初期3拠点)。
    • 全従業員を対象とした制度説明会、利用ガイドラインの配布、マネージャー向け研修を実施。
    • 社内ポータルサイトに多拠点ワークに関する情報集約ページを開設。
  4. 展開・定着フェーズ(継続中):
    • 利用状況や従業員のフィードバックを定期的に収集し、制度や運用方法を継続的に改善。
    • 新たな連携地域を順次拡大し、サテライトオフィス網を拡充。
    • 地域交流プログラムのバリエーションを増やし、参加を促進。

推進体制としては、人事部門が中心となり、IT部門、総務部門、そして新たに設置された「地域連携推進室」が密に連携しながら進められました。

直面した課題と、それに対する具体的な解決策

導入プロセスにおいて、いくつかの課題に直面しました。

導入による効果・成果

これらの取り組みの結果、株式会社コミュニティリンクでは以下のような具体的な効果や成果が現れています。

取り組みが成功した要因分析

株式会社コミュニティリンクの多拠点ワーク推進が成功した主な要因として、以下の点が挙げられます。

今後の展望や継続的な取り組み

株式会社コミュニティリンクでは、今後も多拠点ワークと地域連携の取り組みをさらに進化させていく予定です。

まとめ

株式会社コミュニティリンクの事例は、多拠点ワークや地方でのリモートワーク推進が、単に働く場所を増やすだけでなく、採用力強化、従業員エンゲージメント向上、そして企業イメージや新規事業創出といった、企業価値全体の向上に繋がる可能性を示しています。

もちろん、地域社会との連携構築や、離れた場所にいるメンバーのマネジメントなど、乗り越えるべき課題は存在します。しかし、同社が示したように、経営層のコミットメント、丁寧な関係構築、従業員視点での制度設計、そしてテクノロジーとマネジメントスキルの両面からのアプローチを組み合わせることで、これらの課題を克服し、多様な働き方から大きな成果を生み出すことが可能です。

本事例が、多様な働き方の導入・推進を検討されている皆様にとって、実践的なノウハウや課題解決のヒント、そして新たな取り組みの可能性を見出す一助となれば幸いです。