働き方変革 事例集

株式会社コネクトリンク:社内兼業制度導入で実現した従業員の多能化と組織横断的な連携強化事例

Tags: 働き方改革, 社内兼業, 多能工化, 組織活性化, 人材育成

はじめに

今日のビジネス環境は急速に変化しており、企業には組織全体の俊敏性と、従業員一人ひとりの多様なスキルセットが求められています。このような背景から、多様な働き方の一つとして、従業員が所属部署以外の業務にも従事できる「社内兼業制度」が注目されています。本記事では、製造業である株式会社コネクトリンクが、どのように社内兼業制度を導入し、従業員の多能化と組織横断的な連携強化に成功したのか、その具体的な取り組み事例をご紹介します。

人事部門の皆様が、自社の働き方改革や人材育成、組織活性化のヒントとして本事例をご活用いただければ幸いです。

株式会社コネクトリンクの概要と多様な働き方導入の背景

株式会社コネクトリンクは、従業員数約3000名の歴史ある製造業です。長年にわたり培ってきた技術力と品質で市場での地位を確立してきましたが、近年、デジタル技術の進化やグローバル市場での競争激化により、従来の事業モデルだけでは持続的な成長が難しいという課題に直面していました。

このような状況下で、同社は以下の目的から、従業員の多様な働き方、特に「社内兼業制度」の導入を検討しました。

「社内兼業制度」の具体的な取り組み内容

株式会社コネクトリンクが導入した社内兼業制度は、従業員が現在の所属部署の業務を遂行しながら、週あたり最大8時間まで他の部署やプロジェクトの業務を兼業できるというものです。この制度を円滑に運用するため、以下の具体的な施策が講じられました。

1. 制度設計とルール策定

2. 社内プラットフォームの構築

兼業制度の情報を一元化し、利用しやすくするために、専用の社内プラットフォームを開発しました。このプラットフォームでは、兼業可能な業務の検索・応募、選考状況の確認、兼業中の業務報告、兼業時間の記録・承認などが可能となり、制度運用の効率化に大きく貢献しました。

3. 啓蒙活動と研修

制度開始に先立ち、全従業員向けに制度の目的、メリット、利用方法に関する説明会を繰り返し実施しました。また、兼業を通じて自身のキャリアをどのように形成できるか、具体的な事例を交えながら紹介することで、従業員の関心を高めました。

4. マネージャー向け研修の実施

制度の鍵となるマネージャー層に対して、兼業制度の意義、兼業者を送り出す側・受け入れる側それぞれの役割、目標設定・評価・勤怠管理における留意点、兼業者とのコミュニケーション方法などに関する研修を実施しました。これにより、マネージャーの理解と協力を得ることが、制度成功の重要な要素となりました。

導入プロセスと推進体制

株式会社コネクトリンクでは、人事部主導で社内兼業制度の導入プロジェクトを進めました。

  1. 経営層への提言: 国内外の先進事例や、社内の人材育成・組織活性化の必要性をデータに基づいて提言し、経営層から制度導入の承認を得ました。
  2. プロジェクトチーム結成: 人事部を中心に、労務、IT、主要な事業部の代表者を含むプロジェクトチームを結成し、制度設計、ルール策定、プラットフォーム開発、社内調整などを並行して進めました。
  3. パイロットテスト: 全社展開の前に、一部の部署で約6ヶ月間のパイロットテストを実施しました。これにより、制度設計やプラットフォームの課題を洗い出し、改善点を見つけることができました。
  4. 全社展開: パイロットテストでの知見を反映させた上で、全社に制度を展開しました。この際、前述の啓蒙活動やマネージャー研修を徹底的に実施しました。
  5. 定期的な見直し: 制度導入後も、利用状況のモニタリング、利用者やマネージャーへのアンケート、ヒアリングなどを通じて、定期的に制度の見直しと改善を行っています。特に、マネージャーからの「本業への影響」に関する懸念に対しては、柔軟な運用ルールの検討や、チーム全体の業務負荷分散に関するアドバイスを個別に行いました。

導入・運用で直面した課題と克服策

課題1:所属部署のマネージャーの抵抗感

「本業がおろそかになるのではないか」「チームの負荷が増えるのではないか」といった懸念から、従業員の兼業申請に対して消極的なマネージャーが一定数存在しました。

克服策: マネージャー向け研修において、兼業が個人の成長だけでなく、部署に新しい知見やネットワークをもたらす可能性、将来的な人材配置の選択肢を広げることにつながるメリットを強調しました。また、申請承認の際に、所属部署での業務目標達成に支障がないことを確認するプロセスを強化し、兼業時間の上限設定や、兼業先との連携による業務分担の調整を支援しました。

課題2:兼業者の評価や勤怠管理の複雑化

所属部署と兼業先の双方で業務を行うため、評価基準の設定や勤怠管理が煩雑になるという課題がありました。

克服策: 兼業業務に関する目標設定を、兼業開始前に所属部署・兼業先・兼業者の三者で行うプロセスを導入しました。評価についても、兼業先のマネージャーからのフィードバックを所属部署のマネージャーが参考にし、全体的な評価に反映させる仕組みとしました。勤怠管理については、専用プラットフォーム上で兼業時間と業務内容を記録し、所属・兼業先双方のマネージャーが確認・承認できるシステムを構築しました。

課題3:兼業先でのスキルミスマッチ

兼業希望者が、兼業先での業務に必要なスキルが不足している場合、期待する成果が得られない、または兼業先が受け入れを躊躇するというケースが見られました。

克服策: 兼業募集時に、必要なスキルや経験レベルを具体的に明記することを徹底しました。また、兼業開始前に兼業者と兼業先の担当者で具体的な業務内容と期待値をすり合わせる機会を設けました。必要に応じて、兼業先でのOJTや、社内eラーニングによる補完的なスキル習得を推奨・支援する体制を整えました。

導入による効果と具体的な成果

社内兼業制度の導入により、株式会社コネクトリンクでは以下のような効果が得られました。

成功を支えた要因分析

株式会社コネクトリンクの社内兼業制度が成功した主な要因は以下の通りです。

今後の展望と継続的な取り組み

株式会社コネクトリンクは、社内兼業制度をさらに発展させていく予定です。今後は、兼業可能な業務範囲を社外のプロボノ活動や、期間限定の専門プロジェクトなどにも拡大することを検討しています。また、兼業を通じて得られた成果やスキル習得を、より戦略的な人材配置や人事評価に反映させる仕組みづくりを進めています。

さらに、兼業経験者がメンターとなり、これから兼業に挑戦する従業員をサポートするピアラーニングの体制を構築することで、制度の利用者間の横のつながりを強化し、学び合いの文化を醸成していくことを目指しています。

まとめ

株式会社コネクトリンクの事例は、社内兼業制度が、従業員の多能化、組織横断的な連携強化、社内キャリア形成支援といった複数の目的に効果的に貢献し得ることを示しています。制度設計、マネージャーの巻き込み、テクノロジーの活用、そして継続的な見直しが成功の鍵となります。

多様な働き方の導入を検討されている人事担当者の皆様にとって、本事例が自社における新しい人材活用や組織活性化の取り組みを考える上での参考になれば幸いです。