株式会社コネクトワークス:社内SNS/コラボレーションツールの戦略的活用で実現した組織エンゲージメントと情報共有円滑化事例
はじめに
働き方改革の進展により、リモートワークやハイブリッドワークといった多様な働き方が広がる中、従業員間のコミュニケーション不足や情報共有の偏りが組織運営上の課題となるケースが増えています。特に、規模の大きな組織では、部門間の連携の希薄化や、非公式な情報伝達経路の減少が、組織の一体感や従業員のエンゲージメント低下を招く可能性があります。
本記事では、こうした課題に対し、社内SNSおよびコラボレーションツールを戦略的に導入・活用することで、組織エンゲージメントの向上と情報共有の円滑化を実現した株式会社コネクトワークスの事例をご紹介いたします。ツール導入にとどまらない、同社の組織文化変革への取り組みは、多様な働き方を推進される人事担当者の方々にとって、多くの示唆を含むものと考えられます。
株式会社コネクトワークス:社内SNS/コラボレーションツール導入の背景と目的
通信インフラ事業を展開する株式会社コネクトワークス(従業員数 約5,000名)では、かねてより全国に事業所が点在しており、従業員間の物理的な距離が存在していました。近年、柔軟な働き方を推進するためリモートワーク制度を拡充した結果、オフィスでの偶発的なコミュニケーションが減少し、以下の課題が顕在化しました。
- 情報共有の非効率化と偏り: 公式な情報伝達はメールやイントラネットが中心となり、タイムリーな情報共有や、個人の持つ暗黙知・ノウハウの共有が進まない。一部の部門や階層に情報が滞留しやすい。
- 組織内コミュニケーションの減少: 部署を横断した交流が減り、互いの業務内容や人となりが見えにくくなった結果、組織全体としての一体感が薄れつつある。
- 従業員エンゲージメントの低下懸念: 会社や同僚とのつながりを感じにくくなった従業員の間で、帰属意識やエンゲージメントの低下が懸念される。
- 風通しの悪化: 若手や現場の意見が経営層や他部署に届きにくい構造が固定化されつつある。
これらの課題を解決し、組織の活性化を図るため、同社は社内SNS/コラボレーションツールの導入を決定しました。主な目的は以下の通りです。
- リアルタイムかつオープンな情報共有チャネルを確立し、情報格差を解消する。
- 部署や役職を超えたフラットなコミュニケーションを促進し、組織の一体感を醸成する。
- 従業員同士の心理的な距離を縮め、相互理解を深めることでエンゲージメントを向上させる。
- 現場からのアイデアや意見が吸い上げられやすい風通しの良い組織文化を醸成する。
具体的な取り組み内容:ツール導入と文化醸成施策
コネクトワークス社が導入したのは、リアルタイムチャット、オープンなチャンネル機能、ファイル共有、タスク管理、ビデオ会議連携など多機能を持つ統合型コラボレーションツールでした。ツールの選定においては、使いやすさ、セキュリティ、既存システムとの連携性を重視しました。
ツール導入と並行して、単なるツール導入で終わらせず、組織文化に根付かせるための戦略的な施策を実行しました。
- 全社的な利用ガイドラインの策定と周知: ツールの利用目的、適切な投稿内容、機密情報の取り扱いに関するガイドラインを明確化し、全従業員に周知しました。
- 経営層・管理職の積極的な活用: 経営層が日々の思いや会社の方向性を発信したり、管理職がチーム内の情報共有や業務連絡にツールを活用したりと、率先してツールを利用する姿勢を示しました。
- 社内アンバサダー制度の導入: 各部署からツールの利用促進役となるアンバサダーを選出し、利用方法のサポートや活用事例の共有を行いました。
- 情報共有文化の推進: 各部署の成功事例や業務ノウハウを共有する専用チャンネルを設け、活発な情報交換を奨励しました。質問には誰でも回答できるオープンな文化を醸成しました。
- 非公式な交流の場の提供: 趣味や関心事に関する非公式なチャンネルを設け、業務外のコミュニケーションを促進し、従業員間の人間関係構築を支援しました。
導入プロセス:段階的な展開と丁寧なサポート
ツールの導入は、全社一斉ではなく、一部門でのトライアル導入から段階的に進められました。
- トライアル: 特定の部門でツールを先行導入し、使い勝手や課題を洗い出しました。
- 全社展開計画: トライアルでの知見を基に、段階的なロールアウト計画を策定。部門ごとに導入時期をずらし、丁寧なオンボーディングを実施しました。
- 教育・サポート体制: 利用方法に関するオンライン研修やマニュアルを提供。ヘルプデスクを設置し、従業員からの問い合わせに迅速に対応しました。
- 推進体制: 情報システム部門を中心に、人事部門、広報部門が連携し、ツール導入プロジェクトを推進しました。人事部門は文化醸成の観点から、広報部門は情報発信の観点からサポートを行いました。
直面した課題と解決策
導入プロセスや運用開始後にいくつかの課題に直面しましたが、都度、対策を講じました。
- 課題1:利用率の伸び悩み
- 解決策: 経営層・管理職の積極的な利用促進、社内アンバサダーによる啓蒙活動、成功事例の共有、利用頻度の高い情報(社内イベント案内など)をツール上で発信する運用に変更。
- 課題2:情報過多とノイズ
- 解決策: チャンネルの目的と役割を明確化し、不要なチャンネルを整理。重要な情報は特定のチャンネルに集約するルールを徹底。通知設定のカスタマイズ方法に関するガイドを提供。
- 課題3:公式情報との混同
- 解決策: 公式な発表(人事制度変更、重要なお知らせなど)は、従来通りの正式な伝達経路(イントラネットのポータルや全社メールなど)で行うルールを明確化。ツール上では、それらの情報へのリンクを貼る形式とする。
- 課題4:セキュリティへの懸念
- 解決策: 情報セキュリティポリシーに基づいたツール利用ガイドラインを周知徹底。定期的なセキュリティ研修を実施。ツールのアクセス権限設定を適切に行う。
導入による効果・成果
社内SNS/コラボレーションツールの戦略的な導入・活用は、コネクトワークス社に定量・定性両面で顕著な効果をもたらしました。
- 従業員エンゲージメントの向上(定量): 導入前後で実施した従業員エンゲージメントサーベイにおいて、「社内のコミュニケーションに満足している」という項目のスコアが導入前の58%から導入後1年で72%に向上しました。また、「会社への帰属意識を感じる」という項目のスコアも同様に向上傾向を示しました。
- 情報探索時間の削減(定量): 社内アンケートによると、必要な情報を見つけるまでの時間が平均で約20%削減されたという回答が得られました。これは、オープンなチャンネルでの情報共有が進んだことによる効果と考えられます。
- メール送信量の削減(定量): 社内間のメール送信量が、ツール導入後6ヶ月で約30%削減されました。簡単な連絡や質問はツール上で行われるようになったことが要因です。
- 部署間連携の強化(定性): 以前は交流が少なかった部署間で、ツール上の共通チャンネルやプロジェクトグループを通じて情報交換や相談が行われるようになり、連携が円滑化しました。
- 組織文化の風通しの良化(定性): 役職に関わらず、誰でも気軽に発言できる雰囲気が醸成され、現場からのアイデアや意見が以前より多く吸い上げられるようになりました。若手社員からの発言機会も増加しました。
取り組みが成功した要因分析
コネクトワークス社の取り組みが成功した主な要因は以下の点に集約されます。
- 経営層の強いコミットメント: 経営層自らがツールを積極的に利用し、その重要性を繰り返し発信したことが、従業員の利用を促進しました。
- 「ツール導入」ではなく「文化醸成」を目的としたアプローチ: 単にツールを導入するだけでなく、情報共有やコミュニケーションの文化を変えるための施策をセットで実行したことが成功の鍵となりました。
- 推進体制の連携: 情シス、人事、広報といった関連部門が密接に連携し、技術的な側面だけでなく、利用促進や文化醸成といった側面からもプロジェクトを推進しました。
- 従業員の声の反映: 利用状況をモニタリングし、従業員からのフィードバックを収集・分析し、運用ルールの改善や新しいチャンネルの設置などに反映させるPDCAサイクルを回したことが、利用定着につながりました。
今後の展望
コネクトワークス社では、今後も社内SNS/コラボレーションツールの活用を深化させていく予定です。具体的には、特定の業務プロセスにおけるツール活用テンプレートの整備、外部パートナーとの連携における活用可能性の検討、AIを活用した情報検索・要約機能の導入などを検討しています。また、引き続き利用状況や効果をモニタリングし、従業員の働きがい向上に繋がるよう運用を継続的に改善していく方針です。
まとめ
株式会社コネクトワークスの事例は、社内SNS/コラボレーションツールが単なる連絡手段ではなく、組織のコミュニケーションや情報共有のあり方を変革し、従業員エンゲージメントや組織の一体感を高めるための有効なツールであることを示しています。特に、ツール導入だけでなく、経営層のコミットメント、文化醸成、推進体制の構築、そして継続的な運用改善といった多角的な取り組みが、成功には不可欠であることがわかります。
多様な働き方の推進に伴うコミュニケーション課題にお悩みの人事担当者の方々にとって、本事例が自社の取り組みを検討する上での一助となれば幸いです。