株式会社クロス連携テクノロジー:クロスファンクショナルチーム(CFT)推進で組織間の壁をなくし、イノベーションと迅速な意思決定を実現した事例
株式会社クロス連携テクノロジーの多様な働き方推進事例:クロスファンクショナルチーム(CFT)による組織連携強化
変化の激しい現代において、企業が競争優位性を維持するためには、既存の組織構造にとらわれず、多様な知を結集し、迅速に新しい価値を生み出すことが不可欠です。大企業においては、長年の組織体制による縦割り構造が、部門間の連携を阻害し、意思決定の遅延やイノベーションの停滞を招くケースも少なくありません。
本記事では、精密機器メーカーである株式会社クロス連携テクノロジーが、この課題を克服するために導入・推進したクロスファンクショナルチーム(CFT)による働き方改革の事例をご紹介します。どのようにCFTを組織に根付かせ、どのような課題を乗り越え、そしてどのような成果を上げたのか、具体的なプロセスと結果を解説いたします。貴社の組織活性化や多様な働き方推進のヒントとしてご活用いただければ幸いです。
多様な働き方導入の背景・目的
株式会社クロス連携テクノロジーでは、従来の機能別組織において、部門間の連携不足が長年の課題となっていました。市場ニーズの多様化と技術革新の加速に対し、研究開発、設計、製造、営業といった各部門が独立して機能するだけでは、迅速な意思決定や顧客への統合的な価値提供が困難になっていたのです。特に、複数の技術分野を組み合わせた製品開発や、新規事業の立ち上げにおいては、部門間の壁が大きな障壁となっていました。
このような背景から、同社は「組織横断的な知を結集し、イノベーションを加速させること」「市場変化に迅速に対応できる意思決定体制を構築すること」を目的として、多様な働き方の一環としてCFTの全社的な推進を決断しました。これは、従業員一人ひとりが所属部門の専門性を持ちつつ、プロジェクトに応じて柔軟にチームを組み、異なる視点やスキルを融合させることで、組織全体の活力を高める試みでした。
具体的な取り組み内容
同社はCFT推進のために、以下の具体的な施策を実行しました。
- CFT組成ルール・ガイドラインの策定:
- CFTの目的(特定課題解決、新規事業開発、業務プロセス改善など)を明確化。
- 組成期間、メンバー構成(部門・職種・役職の多様性)、活動頻度、成果報告の形式を標準化。
- CFT参加が正規の業務として位置づけられることを明確にし、所属部門の理解と協力を得るための仕組みを整備しました。
- 人材公募・選抜プロセスの設計:
- CFTのテーマごとに求められるスキルや経験を明示し、社内ポータルで参加者を公募しました。
- 応募多数の場合は、CFTリーダーおよび関連部門責任者による選考プロセスを実施しました。
- 従業員が自身のキャリアプランを踏まえて主体的にCFTに参加できる機会を創出しました。
- コラボレーションツールの導入と活用促進:
- プロジェクト管理、情報共有、オンライン会議のための専用デジタルツールを全社導入しました。
- ツールの使い方に関する研修を実施し、部門や場所を超えたスムーズなコミュニケーションと情報連携を支援しました。
- マネージャー層向けの研修実施:
- CFTの意義、目的、そして所属メンバーがCFT活動と通常業務を両立できるよう支援する方法について、マネージャー向けの研修を義務付けました。
- メンバーのCFTでの活動状況を適切に把握し、評価に反映させるためのガイドラインを共有しました。
- CFT活動成果の評価方法の検討:
- CFTごとに設定された目標の達成度を、活動期間終了後に評価する仕組みを導入しました。
- この評価結果を、個人の業績評価や昇進・昇格検討の際の参考情報とする仕組みを段階的に導入しました。
導入プロセス
CFT推進プロジェクトは、人事部、経営企画部、IT推進部を中心としたクロスファンクショナルな推進チームによって主導されました。
- 計画策定: まず、経営層との協議を通じてCFT推進の目的と期待される効果を共有し、全社的な推進体制を確立しました。過去の散発的なプロジェクト活動の知見を収集・分析し、成功要因と課題を洗い出しました。
- トライアル導入: 全社展開に先立ち、特定の事業部内の課題解決をテーマとした小規模なCFTをいくつか組成し、トライアルを実施しました。この期間中に、策定したルールやツールの有効性を検証し、参加メンバーやマネージャーからのフィードバックを収集しました。
- 全社展開: トライアルでの学びを踏まえ、ルールやガイドラインを修正し、全社向けのガイドブックを作成しました。経営層からのメッセージとともに全従業員へCFT推進の目的と参加方法を周知しました。社内説明会を複数回開催し、従業員の疑問や不安を解消に努めました。
- ツール導入とサポート: 選定したコラボレーションツールを導入し、全従業員が利用できるよう環境整備を行いました。ヘルプデスクを設置し、ツールの使い方やCFT活動に関する問い合わせに対応するサポート体制を構築しました。
- 継続的な改善: CFTの活動状況や成果を定期的にモニタリングし、必要に応じてルールやプロセスを見直しました。参加メンバーやマネージャーからのアンケート、ヒアリングを通じて、改善点を洗い出し、制度や運用の最適化を継続しました。
直面した課題と、それに対する具体的な解決策
CFT推進において、同社はいくつかの課題に直面しましたが、それぞれに対し具体的な対策を講じました。
- 課題1:所属部門の通常業務とCFT活動の両立によるメンバーの負荷増大
- 解決策: CFT活動時間を週あたり最大8時間など明確に上限を設定しました。また、CFT活動期間中は所属部門の業務分担を柔軟に見直すよう各部門長に依頼しました。人事部が部門間調整を支援する体制も整備しました。さらに、時間単位の有給休暇制度やフレックスタイム制度の活用を積極的に推奨し、個人が業務時間を調整しやすい環境を整備しました。
- 課題2:CFT活動の成果評価と所属部門での評価の整合性
- 解決策: 個人の目標設定の中に、CFTにおける貢献度や達成目標を盛り込むことを必須としました。期末の評価においては、所属部門の評価に加えて、CFTリーダーからのフィードバックを参考に、CFTでの活動実績を評価項目として加味しました。これにより、従業員がCFT活動に積極的に取り組むことのメリットを明確にしました。
- 課題3:マネージャーがメンバーをCFTに送り出すことへの抵抗
- 解決策: マネージャー向け研修で、CFT参加が個人のスキルアップやキャリア形成に繋がるだけでなく、組織全体の活性化や新たな事業機会創出に不可欠であることを繰り返し伝え、CFT推進の意義への理解を深めました。また、CFT参加メンバーの補充が必要な部門には、人事部が他部門からの協力を得るなど、リソース調整のサポートを行いました。
- 課題4:CFT内の効果的なコミュニケーションと連携の難しさ
- 解決策: 導入したコラボレーションツール上で全ての情報を一元管理することを徹底し、情報共有の漏れを防ぎました。定期的なオンライン会議や、必要に応じてオフラインでのミーティング開催を奨励しました。また、CFTリーダーやメンバーに対して、円滑なコミュニケーションやファシリテーションに関する研修を提供し、チームワークの向上を図りました。
導入による効果・成果
CFT推進の結果、株式会社クロス連携テクノロジーは以下のような具体的な効果・成果を得ることができました。
- 定量的な成果:
- 新規事業開発における検討期間が平均で約30%短縮されました。
- 部門横断的なプロジェクトからの新しいアイデア提案数が年間で約50%増加しました。
- 従業員アンケートにおいて、「部門間の連携がスムーズになったと感じる」という回答が、導入前の45%から導入後には70%に向上しました。
- 特定の業務プロセス改善CFTの活動により、関連業務の工数が平均で15%削減されました。
- 定性的な成果:
- 組織全体の風通しが良くなり、部門間の情報交換が活発になりました。
- 従業員が多様なバックグラウンドを持つ同僚と働く機会を得ることで、視野が広がり、自身の専門性を異なる角度から捉え直す機会が増えました。
- 若手社員が経験豊富な社員とプロジェクトを共にする中で、実践的なスキルやビジネス感覚を習得する機会が増加しました。
- 組織の意思決定スピードが向上し、変化への対応力が強化されました。
- 自身の貢献が組織全体の成果に繋がることを実感する従業員が増え、エンゲージメント向上に寄与しました。
取り組みが成功した要因分析
同社のCFT推進が成功した主な要因として、以下の点が挙げられます。
- 経営層の強いコミットメント: CFT推進が単なる一時的な取り組みではなく、会社の重要な戦略として位置づけられ、経営層がその意義を繰り返し発信し、率先して推進をサポートしたことが、社内全体の理解と協力を得る上で非常に重要でした。
- 明確なルールとツールの整備: CFTの活動目的、期間、評価方法などを明確にしたガイドラインと、円滑なコミュニケーション・情報共有を支えるツールの整備が、従業員が安心してCFT活動に参加できる基盤となりました。
- マネージャー層への十分なサポート: CFT推進においては、メンバーを送り出すマネージャー層の理解と協力が不可欠です。同社はマネージャー向けの研修を徹底し、個別の相談にも応じるなど、丁寧なサポートを提供しました。
- 継続的な改善サイクル: トライアル導入での検証、全社展開後の定期的な効果測定とフィードバック収集、それに基づく制度や運用の見直しといったサイクルを回したことが、課題の早期発見と解決、そして制度の定着に繋がりました。
今後の展望や継続的な取り組み
株式会社クロス連携テクノロジーでは、CFT推進を今後も継続し、組織の柔軟性とイノベーション力をさらに高めていく計画です。今後は、CFT活動で得られた成功事例や知見を全社で共有するプラットフォームを強化し、組織知として蓄積・活用していく方針です。また、CFTリーダー育成プログラムを拡充し、多様なチームを率いることができる人材の育成にも力を入れていく予定です。さらに、外部の専門家やパートナー企業との連携を含むCFTの組成も視野に入れ、組織の壁だけでなく、社外との連携によるイノベーション創出も積極的に推進していく考えです。
結論
株式会社クロス連携テクノロジーの事例は、クロスファンクショナルチーム(CFT)という働き方が、大企業の縦割り組織に起因する課題を克服し、組織横断的な連携強化、イノベーション加速、意思決定スピード向上に大きく貢献することを示しています。制度設計はもちろんのこと、マネージャー層へのサポートや、従業員の負荷軽減策、そして活動成果の適切な評価といった、現場の課題に丁寧に向き合い、継続的な改善を行うことの重要性が明らかになりました。多様な働き方を推進し、組織の壁をなくして新しい価値創造を目指す企業にとって、本事例は実践的な学びとなるのではないでしょうか。