株式会社イノベーションラーニング:従業員の「学び」を促進する時間確保と評価連携で、継続的なスキルアップと組織活性化を実現した事例
株式会社イノベーションラーニング:従業員の「学び」を促進する時間確保と評価連携で、継続的なスキルアップと組織活性化を実現した事例
多様な働き方が推進される中、従業員一人ひとりの継続的なスキルアップは、企業が変化に対応し、競争力を維持していく上で不可欠な要素となっています。しかし、日々の業務に追われ、自己研鑽の時間を確保することが難しいと感じている従業員も少なくありません。本記事では、株式会社イノベーションラーニングがどのようにしてこの課題に取り組み、従業員の「学び」を促進する働き方改革によって、継続的なスキルアップと組織活性化を実現したのか、その具体的な事例をご紹介します。
多様な働き方導入の背景・目的
株式会社イノベーションラーニングでは、急速に変化する技術トレンドと市場ニーズに対応するため、従業員の継続的な能力開発が喫緊の課題となっていました。従来の研修制度だけでは、多様化する専門分野や個々のキャリア志向に応えきれておらず、従業員の自律的な学習意欲を引き出す仕組みが不足していると感じていました。
また、働き方の柔軟性を高める中で、単に時間や場所に縛られないだけでなく、従業員が自身のキャリアについて主体的に考え、必要なスキルを習得していく「キャリア自律」を支援することが、組織全体のエンゲージメントと生産性向上につながると考えました。こうした背景から、「業務時間内での学習時間の確保」と「学習成果の人事評価への反映」を柱とした、従業員の「学び」を促進する働き方改革の検討を開始しました。
具体的な取り組み内容
株式会社イノベーションラーニングが導入した主な取り組みは以下の通りです。
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「ラーニング・アワー制度」の導入:
- 従業員は、所属部門長の承認を得た上で、週に最大4時間(月換算で約16時間)まで、業務時間内に自己研鑽のための学習時間を確保できるようになりました。
- 対象となる学習は、職務に関連する専門スキルの習得はもちろん、将来のキャリアパスに必要な知識や語学学習、ビジネススキルなど、幅広い内容を含みます。
- 利用状況は勤怠システム上で管理され、上司が部下の学習進捗や内容を把握し、サポートできる仕組みを構築しました。
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人事評価項目への学習成果の反映:
- 半期ごとの目標設定面談において、個人の成長目標として具体的な学習計画を組み込むことを推奨しました。
- 評価面談では、設定した学習計画の達成度、学習によって得られた知識やスキルの業務での活用事例、それらがチームや組織にどのような貢献をもたらしたのかを具体的にヒアリングする項目を設けました。
- これにより、学習が単なる自己満足に終わらず、組織全体のパフォーマンス向上につながる行動として正当に評価されることを明確にしました。
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学習コンテンツと環境の整備:
- 大手オンライン学習プラットフォームと契約し、従業員が自由に多様なコンテンツを学習できるようアクセスを提供しました。
- 社内図書館のデジタル化を進め、専門書籍やビジネス書の貸し出しを容易にしました。
- 集中して学習できる環境として、オフィス内に「ラーニングブース」を設置しました。
導入プロセス
この働き方改革は、以下のステップで進められました。
- 課題特定とコンセプト設計: 人事部門主導で従業員アンケートや部門ヒアリングを実施し、学習機会へのニーズや課題を詳細に分析。その結果に基づき、「ラーニング・アワー制度」と「評価連携」を軸としたコンセプトを設計しました。
- 制度詳細の設計と社内調整: 制度の具体的なルール(時間の上限、対象範囲、承認プロセスなど)を設計し、各部門長や労働組合との協議を通じて、全社的な合意形成を図りました。
- パイロット導入と改善: 一部の部門で先行して制度を導入し、運用上の課題や従業員の反応を検証。課題点を踏まえ、制度設計や周知方法を改善しました。
- 全社展開と周知徹底: 改善後の制度を全社に展開。説明会や社内ポータルサイトでの情報発信、マネジメント層向けの研修などを実施し、制度の目的や利用方法を丁寧に周知しました。
- 運用サポート体制の構築: 人事部門内に相談窓口を設置し、制度利用や学習に関する問い合わせに対応。また、上司が部下の学習を適切にサポートできるよう、1on1面談での活用ガイドラインを提供しました。
直面した課題と、それに対する具体的な解決策
導入プロセスや運用開始後、いくつかの課題に直面しました。
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課題1:業務多忙による学習時間確保の困難さ
- 特に繁忙期や特定の職種では、「ラーニング・アワー」を利用する余裕がないという声が聞かれました。
- 解決策1: 経営層およびマネジメント層に対し、「ラーニング・アワー」は従業員の成長と組織の未来への投資であり、優先順位の高い「業務」であるという認識を徹底しました。また、業務効率化ツールの導入支援や、チーム内でのタスク分担の見直しを奨励することで、従業員が時間を作りやすい環境整備に努めました。
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課題2:学習成果の評価連携における難しさ
- 学習した内容が直接的に業務成果に結びつきにくい場合や、その貢献度を定量的に評価することの難しさがありました。
- 解決策2: 評価面談では、単に学習時間を消化したかだけでなく、「何を学び、それをどのように業務に活かそうとしているか」「チーム内での情報共有や新しい提案につながったか」といった、プロセスや定性的な貢献にも焦点を当てるよう、評価者(上司)への研修を強化しました。また、従業員自身が学習による変化や貢献を具体的に語れるよう、面談前の自己評価シートを工夫しました。
導入による効果・成果
「ラーニング・アワー制度」と評価連携を含む働き方改革の導入により、以下のような効果・成果が見られました。
- 学習時間確保制度の利用率向上: 導入初年度で約60%だった利用率が、2年後には80%近くまで向上しました。月平均の利用時間も増加傾向にあります。
- 従業員のスキルアップ実感とエンゲージメント向上: 従業員アンケートでは、「自己成長の機会が増えた」「会社が自身の成長を支援してくれていると感じる」といった肯定的な回答が増加しました。エンゲージメントサーベイの「成長機会」に関する項目で、有意なスコア上昇が確認されました。
- 離職率の低下: 特に若手層を中心に、自身のキャリア形成に対する前向きな姿勢が醸成され、長期的なキャリアを描きやすくなった結果、離職率が微減しました。
- 組織内の知識共有の活性化: 学習した内容を社内ブログで共有したり、有志による勉強会が開催されたりするなど、従業員間の知識共有が活発化し、組織全体の知の探索・活用が進みました。
- 新しいアイデア・提案の増加: 異分野の学習や新しい視点の獲得を通じて、業務改善や新規事業に関する従業員からの提案が増加しました。
取り組みが成功した要因分析
この取り組みが成功した主な要因は以下の通りです。
- 経営層の明確なメッセージと継続的なサポート: 経営層が「学び」の重要性を繰り返し発信し、必要なリソース(時間、予算)を確保したことが、制度の定着を強く後押ししました。
- 人事評価との連携によるインセンティブ設計: 学習が自身の評価やキャリアアップに繋がる仕組みを明確にしたことが、多くの従業員の学習意欲を高めました。
- マネジメント層の積極的な関与: 部下の学習計画の承認だけでなく、学習内容について対話し、業務での活用を支援するなど、マネジメント層が主体的に関わったことが成功の鍵となりました。
- 従業員の声を反映した制度改善: パイロット導入や運用後のフィードバックをもとに制度を柔軟に見直したことで、従業員の納得感と利用しやすさが向上しました。
今後の展望や継続的な取り組み
株式会社イノベーションラーニングでは、今後もこの取り組みを継続・発展させていく計画です。具体的には、対象となる学習コンテンツのさらなる拡充(海外オンライン講座へのアクセス提供など)、学習成果を可視化・共有するプラットフォームの導入、社内メンター制度と連携したOJTと自己学習の融合、そして学習を通じて得られたスキルや知見を社内プロジェクトやポストに活かすためのタレントマネジメントシステムとの連携強化などを検討しています。
従業員の「学び」を組織全体の成長エンジンと捉え、変化に強く、持続的にイノベーションを生み出す組織文化の醸成を目指しています。
多様な働き方を推進する上で、従業員の成長支援は避けて通れないテーマです。株式会社イノベーションラーニングの事例は、時間確保と評価連携という具体的な仕組みを通じて、従業員の自律的な学習を促進し、組織全体の活性化を実現した好事例と言えるでしょう。