株式会社クリエイティブワークス:従業員主導の働き方改革推進で組織エンゲージメントとイノベーションを加速させた事例
働き方改革の推進は、多くの企業にとって重要な経営課題となっています。しかし、トップダウンでの指示だけでは、従業員の心からの共感や主体的な行動を引き出すことに限界がある場合も少なくありません。本記事では、株式会社クリエイティブワークスがどのように従業員の主体的な参加を促し、働き方改革を成功に導き、組織エンゲージメントとイノベーションを同時に実現したか、その具体的な取り組み事例をご紹介します。
働き方改革導入の背景・目的
株式会社クリエイティブワークスでは、以前より多様な働き方の必要性は認識されていましたが、具体的な制度導入や推進は人事部門主導で行われることが中心でした。その結果、一部の制度は利用が進まなかったり、現場のニーズとの間にギャップが生じたりといった課題を抱えていました。また、組織全体のエンゲージメントに伸び悩みが見られ、新しいアイデアやサービス開発におけるブレークスルーが不足しているという認識もありました。
このような状況から、同社は働き方改革を単なる制度変更ではなく、組織文化を変革し、従業員一人ひとりがより意欲的に、そして創造的に働ける環境を整備するための重要な機会と捉え直しました。特に、「従業員の声を起点としたボトムアップのアプローチを取り入れることで、当事者意識を高め、真に現場に根付く働き方改革を実現する」ことを主要な目的としました。これにより、従業員エンゲージメントの向上と、それが促進するイノベーションの加速を目指しました。
具体的な取り組み内容
同社が実施した従業員主導の働き方改革の主な取り組みは以下の通りです。
- 「働き方改革プロジェクトチーム」の発足: 従業員から広くメンバーを公募し、部門横断型のプロジェクトチームを立ち上げました。メンバーは通常の業務と兼務で活動しました。
- 全社アンケートとワークショップの実施: 全従業員を対象に働き方に関する課題や希望を問う詳細なアンケートを実施しました。さらに、特定の部署や職種、役職の代表者を集めたワークショップを複数回開催し、深掘りした意見やアイデアを収集しました。
- 「働き方改善アイデア提案制度」の創設: 従業員一人ひとりが日々の業務や働き方に関する改善アイデアを自由に提案できる制度を設けました。提案されたアイデアはプロジェクトチームが一次評価を行い、有望なものは経営層や関係部門に提案される仕組みとしました。
- トライアル導入と効果検証: 提案制度やワークショップで出されたアイデアの中から、実現可能性が高く影響範囲が大きいものについて、特定の部署やチームで試験的に導入しました。例として、柔軟な時間管理が可能な「コアタイムなしフレックス」の試験導入や、リモートワークにおける部署間コミュニケーションツールの導入などが行われました。
- 成功事例の共有と横展開: トライアル導入で効果が確認された事例や、提案制度から生まれた具体的な改善策について、社内報や全社集会で積極的に共有しました。これにより、他の部署や従業員への啓発と横展開を促しました。
- 経営層との定期的な対話: プロジェクトチームは経営層と定期的にミーティングを実施し、現場の声を直接届け、提案へのフィードバックや承認を得る場を設けました。
導入プロセス
プロジェクトは、まず経営層が従業員主導の重要性を理解し、推進を承認することから始まりました。次に、プロジェクトチームの公募と選出が行われ、チームメンバーは働き方改革の専門家による研修を受け、活動計画を策定しました。
計画に基づき、全社アンケートで現状課題とニーズを把握した後、ワークショップを通じて具体的なアイデアを創出しました。並行して提案制度を開始し、従業員からのボトムアップの声を常に収集できる体制を構築しました。
収集されたアイデアはプロジェクトチームが実行可能性や効果を検討し、優先順位付けを行いました。有望なアイデアは人事・総務部門とも連携しながら、既存制度やルールの見直しも視野に入れて具体化を進めました。いくつかのアイデアはスモールスタートでのトライアル導入を決定し、対象チームを選定、導入後の効果測定計画も立案しました。
トライアル期間中はプロジェクトチームが現場の状況をモニタリングし、参加者からのヒアリングを重ねて課題や成功要因を収集しました。効果が確認できた施策は、全社的な展開に向けて準備を進めました。このプロセス全体を通して、経営層への定期的な報告と対話は欠かさず行われました。
直面した課題と、それに対する具体的な解決策
取り組みを進める中で、いくつかの課題に直面しました。
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課題1: 従業員の関心と参加率のばらつき 当初は一部の意識の高い従業員のみが積極的に参加し、全体の関心は限定的でした。
- 解決策: 経営層からの「働き方改革は全従業員で作り上げるもの」という強いメッセージを繰り返し発信しました。社内報やイントラネットでプロジェクトの進捗や成功事例を積極的に広報し、身近なテーマであることを強調しました。また、提案制度の応募者やプロジェクトチームメンバーに対して、社内表彰や部門目標への反映といった形で目に見えるインセンティブを設けました。
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課題2: 従業員からの提案の実現可能性 アイデア提案制度には多くの意見が集まりましたが、中には抽象的であったり、現在のリソースやシステムでは実現が難しいものも多く含まれていました。
- 解決策: プロジェクトチームが提案者と個別に面談し、アイデアの具体化を支援しました。また、人事、情報システム、各事業部門の責任者などを交えた「アイデア検討会」を定期開催し、実現に向けた課題や必要なサポートを具体的に議論しました。すぐに全社導入が難しくても、特定の部署やチームでトライアルとして実施する道を模索しました。
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課題3: 管理職層の理解と協力 部下からの働き方に関する提案や、新しい働き方への対応について、一部の管理職から戸惑いや抵抗が見られました。
- 解決策: 管理職向けに、働き方改革の目的や従業員主導の意義、多様な働き方を支援するためのマネジメント方法に関する研修を実施しました。また、プロジェクトチームや人事部門が個別の管理職からの相談に対応し、成功事例や具体的なサポート策を共有しました。管理職自身が新しい働き方を実践し、部下のロールモデルとなるような働きかけも行いました。
導入による効果・成果
これらの取り組みの結果、株式会社クリエイティブワークスでは顕著な効果が現れました。
- エンゲージメント向上: 定期的に実施しているエンゲージメントサーベイの総合スコアが、取り組み開始から1年で〇ポイント上昇しました。「会社は従業員の意見を尊重している」「自分の働き方を自分で選択できる余地がある」といった項目のスコアが特に大きく伸びました。
- イノベーションの加速: 働き方改善アイデア提案制度を通じて、年間で〇件の新しいアイデアが提出され、そのうち〇件が事業化に向けた検討に進みました。部署横断での共同プロジェクトが増加し、異なる視点からのアイデア創出が活性化しました。
- 生産性向上: コアタイムなしフレックスやリモートワークツールのトライアル導入を行った部署では、時間あたりの生産性が平均〇%向上したというデータが得られました。
- 離職率低下: 特に若手・中堅層の離職率が、働き方改革推進前と比較して〇ポイント低下しました。従業員からは「自分の意見を聞いてもらえる」「柔軟な働き方が可能になり、ワークライフバランスが改善した」といった声が多く聞かれるようになりました。
取り組みが成功した要因分析
株式会社クリエイティブワークスの従業員主導型働き方改革が成功した要因は、以下の点が挙げられます。
- 経営層の強いコミットメント: 単なる承認に留まらず、従業員主導の重要性を自ら発信し、プロジェクトチームとの対話を継続的に行ったことが、全社的な推進力を生みました。
- 従業員の当事者意識の醸成: プロジェクトチームへの公募、アンケート、ワークショップ、提案制度といった多様なチャネルを設けることで、多くの従業員が「自分たちの働き方は自分たちで変えられる」という意識を持つことができました。
- 人事部門と現場の連携: 人事部門が制度やルール改正の専門知識でプロジェクトチームをサポートしつつ、現場の声を真摯に聞き、実現に向けて柔軟に対応したことが大きな推進力となりました。
- スモールスタートと成功事例の共有: いきなり全社で大規模な変更を行うのではなく、特定の部署でトライアルを行い、成功事例を積み上げて共有することで、抵抗感を減らし、ポジティブな変化を促しました。
今後の展望や継続的な取り組み
株式会社クリエイティブワークスでは、従業員主導の働き方改革を単発のプロジェクトとして終わらせるのではなく、組織文化として定着させることを目指しています。今後は、提案制度で生まれた優れたアイデアをさらに迅速に実行に移すためのプロセス改善や、多様な働き方を支援するための管理職向けマネジメント研修の継続的な実施、テクノロジーを活用した働き方支援ツールの導入などを計画しています。従業員の声を継続的に収集し、変化する状況に合わせて働き方をアップデートしていく仕組みを強化していく方針です。
本事例は、働き方改革が人事部門だけでなく、従業員一人ひとりの主体的な参加によって、より効果的かつ持続可能なものとなる可能性を示しています。従業員のエンゲージメント向上と組織の活性化を目指す企業にとって、示唆に富む事例と言えるでしょう。