株式会社ハーモニーライフ:ウェルビーイング経営と連動した働き方改革で、従業員の心身の健康とエンゲージメントを高めた事例
株式会社ハーモニーライフがウェルビーイング経営と連動した働き方改革で実現した、従業員の心身の健康とエンゲージメント向上事例
導入の背景・目的
株式会社ハーモニーライフでは、従業員の高齢化やライフスタイルの多様化が進む中で、心身の健康維持と働きがいの両立が組織全体の持続性に不可欠であるという認識が高まっていました。従来の働き方は、長時間労働や休暇取得への心理的ハードルといった課題を抱えており、これが従業員のストレス増加やエンゲージメントの伸び悩みにつながっているという分析がありました。
そこで同社は、「ウェルビーイング経営」を経営戦略の柱の一つに据え、単なる労働時間短縮や場所の自由化に留まらない、従業員一人ひとりの幸福度や健康度を高める働き方改革の推進を決定しました。目的は、従業員の心身の健康維持・向上を通じて生産性を高め、組織全体の活力を向上させ、優秀な人材の確保・定着を図ることでした。
具体的な取り組み内容
株式会社ハーモニーライフは、ウェルビーイング経営と働き方改革を連動させるため、以下の具体的な施策を展開しました。
- 柔軟な勤務制度の拡充:
- コアタイム無しのスーパーフレックスタイム制度を全社員に適用。
- リモートワーク規程を改定し、利用回数制限を撤廃。より多様な働き方に対応可能としました。
- 休暇取得促進と休息の推奨:
- 年間5日の年次有給休暇の計画的付与を義務化。
- 勤続年数に応じたリフレッシュ休暇制度を新設。
- 経営層や管理職が率先して休暇を取得し、その重要性を発信するキャンペーンを実施。
- メンタルヘルスケアの強化:
- 外部のEAP(従業員支援プログラム)サービスを拡充し、カウンセリングや相談窓口へのアクセスを容易にしました。
- ストレスチェック後の高ストレス者への医師による面接指導勧奨と、その後のフォローアップ体制を強化。
- 管理職向けにラインケア研修を定期的に実施。
- 健康増進プログラムの推進:
- 健康診断結果に基づいた特定保健指導の受診率向上に向けた啓発活動。
- ウォーキングイベントや健康セミナーの開催。
- 産業医や保健師による健康相談会の実施回数を増加。
- コミュニケーションと心理的安全性の向上:
- 上司と部下間の定期的な1on1ミーティングを奨励・定着化させるためのガイドラインを策定。
- 気軽に雑談できるオンライン上の「バーチャル休憩室」を開設。
- ハラスメント防止研修を徹底し、心理的安全性を損なう行為への意識を高めました。
導入プロセス
これらの取り組みは、経営企画部、人事部、総務部、各事業部代表からなる横断的なプロジェクトチームを発足させ、推進されました。
まず、現状把握のために全従業員を対象としたウェルビーイングに関する意識調査とストレスチェックを実施しました。その結果に基づき、施策の優先順位を決定。柔軟な勤務制度や休暇制度の改定、メンタルヘルス支援の拡充といった制度面の設計を進めました。
制度設計と並行して、社内説明会やイントラネットでの情報発信を通じて、従業員への周知と制度導入の意義の浸透を図りました。特に、経営層からの強いメッセージ発信は、取り組みへの全社的な関心を高める上で重要な役割を果たしました。
一部部署でのトライアル実施を経て、課題を抽出・改善し、段階的に全社展開を進めました。ITツールの活用(勤怠管理システム、健康管理システム、オンラインコミュニケーションツール)も積極的に行い、制度利用の利便性向上と効果測定のためのデータ収集体制を整備しました。
直面した課題と解決策
導入プロセスでは、いくつかの課題に直面しました。
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課題1:従業員の意識改革の遅れ 「忙しい時期に休暇を取りにくい」「リモートワークだとサボっていると思われるのではないか」といった、従来の働き方や社内文化に根差した懸念や抵抗感が見られました。 解決策: 経営層や役員が率先して柔軟な働き方や休暇を取得し、その様子を積極的に発信することで、ロールモデルを示しました。「休むことは生産性向上に繋がる投資である」といったメッセージを繰り返し伝え、意識改革を促しました。また、評価制度において、時間ではなく成果を重視する方針を明確にしました。
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課題2:管理職のマネジメント負担増加 部下一人ひとりの働き方や健康状態を把握し、成果を適切に評価すること、リモート環境下でのコミュニケーション維持などに、管理職が難しさを感じることがありました。 解決策: 管理職向けに、柔軟な働き方における目標設定・評価手法、1on1の効果的な実施方法、部下の健康状態把握・ケアに関する研修を強化しました。また、タスク管理ツールやコミュニケーションツールの活用方法についてもサポートを行い、ITによる負担軽減を図りました。
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課題3:部署による制度活用のばらつき 業務内容の特性上、リモートワークやスーパーフレックスの利用が難しい部署があることによる不公平感が生じ得ると懸念されました。 解決策: 制度の適用範囲を明確にするとともに、リモートワークが難しい部署に対しては、オフィス環境の改善や、短時間単位の休暇取得制度の拡充など、別の形でのウェルビーイング施策を重点的に実施することを検討しました。また、ウェルビーイング施策全体の目的(従業員の幸福度向上)を繰り返し伝え、制度間の相互理解を深めました。
導入による効果・成果
取り組みの結果、定量・定性両面で確かな効果が見られました。
- 数値データ:
- ストレスチェックにおける高ストレス者率が導入前の15%から10%に低下しました。
- 年次有給休暇の平均取得率が導入前の60%から75%に向上しました。
- 定期健康診断後の再検査・精密検査の受診率が向上し、従業員の健康への意識が高まりました。
- 特に若手層および育児・介護中の従業員における離職率が、全社平均より有意に低下しました。
- 定性的な変化:
- 全社従業員満足度調査において、「会社の健康への配慮」「働き方の柔軟性」「働きがい」に関する項目でスコアが大幅に上昇しました。
- 従業員からは「体調を崩しにくくなった」「家族との時間が増えた」「自分のペースで仕事ができ生産性が上がった」といった肯定的な声が多く聞かれるようになりました。
- 部署内のコミュニケーションが活性化し、互いの健康や働き方を気遣う雰囲気が出てきました。
- 休憩時間の確保や休暇取得が増えたことで、業務への集中力や創造性が向上したと感じる従業員が増えました。
取り組みが成功した要因分析
本取り組みの成功要因としては、以下の点が挙げられます。
- 経営層の強いリーダーシップとコミットメント: ウェルビーイング経営を明確に打ち出し、自らも率先して行動することで、全社的な意識統一と推進力を生み出しました。
- 従業員の声の継続的な反映: 導入前の意識調査だけでなく、導入後も定期的にアンケートやヒアリングを実施し、従業員のニーズや現場の状況を把握しながら施策を柔軟に改善しました。
- 人事部門と他部署との連携: 人事部だけでなく、総務部によるオフィス環境改善、情報システム部によるITインフラ整備、広報部による社内周知活動など、関係部署が密接に連携し、一体となって取り組みを進めました。
- 定量・定性両面での効果測定と可視化: ストレスチェック結果や有休取得率といった定量データに加え、従業員アンケートやヒアリングによる定性的な声も収集・分析し、取り組みの成果を定期的に社内外に発信することで、継続的な推進のモチベーションと改善の指針としました。
今後の展望や継続的な取り組み
株式会社ハーモニーライフは、今後もウェルビーイング経営に基づいた働き方改革を継続・深化させていく方針です。従業員の多様なニーズにさらに応えるため、特定のライフイベント(育児、介護、病気治療など)に対応した柔軟な制度拡充や、家族のウェルビーイング支援なども検討しています。また、健康管理システムの活用を進め、より個人の状態に合わせたサポートを提供することや、AIなどを活用した心身の不調の早期発見・予防といった取り組みも視野に入れています。
まとめ
株式会社ハーモニーライフの事例は、働き方改革を単なる制度変更に留めず、ウェルビーイング経営という視点から、従業員の心身の健康と幸福度向上に焦点を当てた取り組みが、結果として組織の活性化や生産性向上、そしてエンゲージメント強化に繋がることを示しています。特に、経営層の強いコミットメント、従業員の声を聴く姿勢、そして多角的な施策の連携が成功の鍵となりました。多様な働き方の推進を検討されている企業の人事担当者の方々にとって、従業員の「幸福」という視点を取り入れた改革の参考となる事例と言えるでしょう。