株式会社インテリジェントナレッジ:ナレッジ共有プラットフォーム導入と文化醸成で、情報探索時間削減と組織知力向上を実現した事例
株式会社インテリジェントナレッジ:ナレッジ共有プラットフォーム導入と文化醸成で、情報探索時間削減と組織知力向上を実現した事例
近年、リモートワークやハイブリッドワークといった多様な働き方が広がるにつれて、オフィスに集まらずとも円滑な情報共有と連携を実現することが、多くの企業にとって重要な経営課題となっています。特に、従業員一人ひとりが持つ専門知識や業務ノウハウといった「暗黙知」を含めた組織全体の知見をいかに集約し、活用していくかは、生産性や競争力の向上に直結します。
本記事では、多様な働き方を推進する中で、情報の分散化と知見の属人化という課題に直面していた株式会社インテリジェントナレッジが、どのようにナレッジ共有プラットフォームを導入し、組織文化の変革を通じてこれらの課題を克服、情報探索時間の削減と組織全体の知力向上を実現したのか、その具体的な取り組み事例をご紹介します。
多様な働き方導入の背景・目的
株式会社インテリジェントナレッジでは、以前から柔軟な働き方としてリモートワークを推奨していましたが、コロナ禍を経てその頻度が高まり、全社的なハイブリッドワーク体制へと移行しました。これにより、従業員は場所や時間にとらわれずに働けるようになった一方で、いくつかの新たな課題が顕在化しました。
- 情報の分散化: これまで対面での会話やオフィスでの非公式な情報交換で共有されていた知見が、分散した働き方により共有されにくくなりました。
- 知見の属人化: 特定の業務やプロジェクトに関する深い知識が、担当者個人に留まってしまい、組織全体で横断的に活用できていませんでした。
- 情報探索コストの増加: 必要な情報がどのファイルサーバーにあるのか、誰に聞けば良いのかが分かりにくくなり、情報を見つけ出すのに時間を要していました。特に新任者や異動者にとって、オンボーディングやキャッチアップの大きな負担となっていました。
- 問い合わせ対応によるコア業務の圧迫: 各部署の担当者や専門知識を持つ従業員への同様の問い合わせが集中し、本来集中すべき業務時間が圧迫されていました。
これらの課題を解決し、分散した環境下でも組織全体の生産性を維持・向上させ、従業員が自律的に業務遂行できる環境を整備するため、同社はナレッジ共有の抜本的な改革に乗り出しました。
具体的な取り組み内容
株式会社インテリジェントナレッジでは、以下の3つの柱を中心にナレッジ共有の改革を推進しました。
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ナレッジ共有プラットフォームの導入:
- 検索性の高さ、直感的な操作性、柔軟な権限設定、既存システム(コミュニケーションツール、ファイルストレージなど)との連携機能を重視し、最適なプラットフォームを選定しました。
- プロジェクト情報、業務手順書、FAQ、技術情報、議事録、社内研修資料など、様々な種類の情報を一元管理できる基盤を構築しました。
- 特に、業務の中で生まれた「こうすればうまくいく」といった実践的なノウハウや、「このエラーはこう解決した」といったトラブルシューティングの知見を気軽に投稿・共有できる仕組みを目指しました。
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「書く文化」「探す文化」の醸成:
- プラットフォームを導入するだけでなく、従業員が積極的に情報を「書き」、活用するために情報を「探す」文化を根付かせるための施策を並行して実施しました。
- ガイドライン策定: どのような情報を、どのような形式で書くべきか、シンプルで分かりやすいガイドラインを作成しました。完璧を目指すのではなく、まずは「書いてみる」ことを推奨する姿勢を示しました。
- 投稿支援: 各部署にナレッジ共有推進担当者を置き、メンバーが記事を作成する際のサポートを行いました。テンプレートを提供し、投稿ハードルを下げる工夫も行いました。
- 社内表彰制度: 四半期に一度、最も多くの有益なナレッジを共有した部署や個人、特に参照された記事を作成した個人を表彰する制度を導入しました。
- マネージャー層からの推奨: 各部署のマネージャーに対してナレッジ共有の重要性を浸透させ、チームメンバーに積極的な利用と投稿を推奨するよう働きかけました。評価項目の一部に、チーム内のナレッジ貢献度を反映させることも検討されました。
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推進体制の構築と継続的な改善:
- IT部門と人事部門が連携した推進プロジェクトチームを発足しました。IT部門はプラットフォームの運用・管理、技術的なサポートを担当し、人事部門は文化醸成施策、従業員への啓蒙、評価への連携を担いました。
- 導入後も、従業員からのフィードバックを定期的に収集し、プラットフォームの機能改善や、ガイドラインの見直し、文化醸成施策の軌道修正を継続的に行いました。
導入プロセス
- プロジェクト発足と課題定義: 多様な働き方の定着に伴う情報共有課題を経営層と共有し、ナレッジ共有改革プロジェクトを発足。現状分析を通じて具体的な課題と達成目標を設定。
- プラットフォーム選定: 複数のツールを比較検討し、パイロット導入可能なツールを選定。一部の部署でトライアルを実施し、使いやすさや機能面での評価を行いました。
- パイロット導入と改善: 評価の高かったプラットフォームを、まず一部の部署(特にリモートワーク頻度の高い部署や、情報共有の課題が顕著だった部署)に先行導入。利用状況をモニタリングし、従業員からのフィードバックを収集。操作方法に関する研修や説明会を実施。
- 全社展開と啓蒙: パイロット導入での知見を活かし、全社への展開計画を策定。全従業員向けの説明会、操作研修、利用ガイドラインの説明をオンライン・オフライン両方で実施。社内報やポスター、イントラネットを通じてナレッジ共有の重要性を継続的に周知しました。
- 文化醸成施策の実行と定着: 社内表彰制度の開始、マネージャー向け説明会の実施、成功事例の共有会などを通じて、「書く」「探す」文化の定着を目指しました。推進チームが積極的にプラットフォーム上で情報発信するなど、模範を示すことにも注力しました。
- 効果測定と継続的改善: 定期的なアンケート調査、プラットフォームの利用状況データ分析、業務効率化に関するヒアリング等を通じて効果測定を実施。得られた結果を基に、プラットフォームの活用方法や文化醸成施策の改善を継続的に行っています。
直面した課題と、それに対する具体的な解決策
課題1:従業員がナレッジを「書く」ことへのハードルが高い 「忙しくて書く時間がない」「何を書けば良いか分からない」「書くのが面倒」といった声が多く聞かれました。
- 解決策:
- 投稿ガイドラインの簡素化: まずは短くても良い、完璧でなくても良いというメッセージを発信し、気軽に投稿できる雰囲気を作りました。
- インセンティブ付与: 社内表彰制度に加え、一部の部署では目標設定にナレッジ共有への貢献を組み込むなど、評価との連携を試みました。
- 「質問に対する回答はプラットフォームで」の徹底: 口頭やチャットでの個人的な質問に対し、「その内容はプラットフォームにまとめて共有しましょう」と促すことで、自然とコンテンツが増えるように誘導しました。
- マネージャーからの推奨: マネージャーがチーム内で「今日の学びを〇〇に書いてみよう」と積極的に声かけを行いました。
課題2:既存の文書やファイルからの移行・整理が膨大 長年蓄積されたファイルサーバーや個人のPC内の文書を、どのようにプラットフォームに移行・整理するかが大きな課題でした。
- 解決策:
- 移行ツールの活用: プラットフォームが提供する移行ツールや、外部の移行支援サービスを検討・活用しました。
- 優先順位付け: 全てを一気に移行するのではなく、全社的に参照頻度が高い情報や、リモートワークで特にアクセスしにくい情報から優先的に移行を進めました。
- 部署ごとの担当者配置: 各部署に移行担当者を置き、自部署関連の情報整理・移行を主導させ、推進チームがサポートする体制をとりました。
課題3:情報の鮮度維持と陳腐化 一度書かれた情報が古くなったり、重複したりすることが発生しました。
- 解決策:
- コンテンツオーナー制度: 重要な情報には必ず担当者(オーナー)を定め、定期的な内容確認・更新を義務付けました。
- 更新日と閲覧数を可視化: プラットフォーム上で情報の最終更新日や閲覧数を表示することで、情報の鮮度や重要度を判断しやすくしました。
- 「古くなった情報に気づいたら報告」ルール: 従業員が古い情報に気づいた際に、簡単に報告できる仕組みを設けました。
導入による効果・成果
ナレッジ共有プラットフォームの導入と文化醸成の取り組みにより、株式会社インテリジェントナレッジでは、以下のような効果・成果が見られました。
- 情報探索時間の削減: 導入前と導入半年後の社内アンケート調査によると、従業員一人あたりの「必要な情報を探し出すのにかかる時間」が平均で約20%削減されたというデータが得られました。
- 問い合わせ件数の減少: 特に情シス部門や特定の専門部署への定型的な問い合わせが減少し、これらの部署のコア業務に集中できる時間が増加しました。
- 組織全体の知力向上: 部署やチームを超えて知見が共有されるようになり、新たな課題に対する解決策や、業務効率化のヒントをプラットフォーム内で見つけ出すケースが増加しました。これにより、組織全体の課題解決能力やイノベーションの素地が向上しました。
- 新入社員・異動者の早期戦力化: 業務手順やよくある質問、プロジェクトに関する情報が体系的にまとめられているため、新入社員や異動者が短期間で必要な情報を習得し、業務に順応できるようになりました。オンボーディング期間が平均で約15%短縮されたという報告もあります。
- リモートワーク下での連携強化: 離れて働く環境でも、共通のプラットフォームを通じて情報にアクセスできるようになったことで、チーム内外の連携がスムーズになりました。
取り組みが成功した要因分析
株式会社インテリジェントナレッジのナレッジ共有改革が成功した主な要因は以下の通りです。
- 経営層の強いコミットメント: ナレッジ共有が多様な働き方を支える基盤であり、組織力強化に不可欠であるという認識が経営層にあり、プロジェクトに強い推進力を与えました。
- 明確な目的設定と効果測定: なぜナレッジ共有が必要なのか、何を目指すのか(例:情報探索時間削減)、その効果をどのように測定するのかを明確にしたことで、従業員の共感を得やすく、取り組みの進捗を管理しやすくなりました。
- 文化醸成への注力: 単にツールを導入するだけでなく、「書く文化」「探す文化」を根付かせるための人的・組織的な側面への投資を惜しまなかったことが、プラットフォームの積極的な利用に繋がりました。
- 従業員からのフィードバックの活用: パイロット導入や全社展開後も継続的に従業員の意見を収集し、プラットフォームの機能や使い方の改善に反映させたことで、現場のニーズに合った形で運用を進めることができました。
- 他部門との連携: IT部門と人事部門が密に連携し、技術的な側面と組織・文化的な側面の両方からアプローチしたことが、改革を包括的に推進する上で重要な役割を果たしました。
今後の展望や継続的な取り組み
株式会社インテリジェントナレッジでは、今後もナレッジ共有の取り組みを継続・深化させていく方針です。具体的には、以下のような点を検討・実施しています。
- AIを活用したナレッジ推奨機能の強化: 従業員の過去の検索履歴や閲覧傾向に基づき、関連性の高いナレッジを自動的に推奨する機能を活用し、更なる情報探索効率化を目指します。
- ナレッジ共有と人材育成・評価制度の連携強化: 従業員のナレッジ貢献度を正式な人事評価項目に組み込むことや、共有されたナレッジを従業員のスキルアップやキャリアパス形成にどう活用できるかを検討しています。
- 外部パートナーや顧客との知見共有: 機密情報に配慮しつつ、一部のナレッジを外部のビジネスパートナーや顧客と共有することで、連携強化やサービス品質向上に繋げる可能性を探っています。
まとめ
株式会社インテリジェントナレッジの事例は、多様な働き方を推進する上でナレッジ共有が不可欠な基盤であることを示しています。単にツールを導入するだけでなく、組織文化の変革を伴うことで、知見の分散や属人化といった課題を克服し、情報探索時間の削減、生産性向上、そして組織全体の知力向上を実現することが可能です。
人事担当者の皆様が自社の働き方改革を検討される際には、ぜひナレッジ共有の現状を見直し、組織全体の知見を最大限に活用するための具体的な取り組みを検討されてはいかがでしょうか。この事例が、皆様の働き方改革推進の一助となれば幸いです。