働き方変革 事例集

株式会社プロアクティブリンク:内発的動機付けを重視した評価・マネジメント改革で従業員の自律性と創造性を高めた事例

Tags: 内発的動機付け, エンゲージメント向上, 評価制度改革, マネジメント改革, 自律性向上

はじめに

現代のビジネス環境は変化が激しく、企業には従業員一人ひとりの自律性や創造性がこれまで以上に求められています。しかし、従来の指示型マネジメントや硬直化した評価制度は、従業員の受動性を生み出し、内発的な意欲や潜在能力を引き出しにくいという課題を抱えていることも少なくありません。

本記事では、このような課題に対し、従業員の「内発的動機付け」を重視した働き方改革を推進し、組織の活性化と持続的な成長を実現した株式会社プロアクティブリンク様の事例をご紹介します。同社がどのように内発的動機付けに着目し、具体的な制度改革やマネジメント変革、文化醸成に取り組んだのか、そのプロセス、直面した課題、そして得られた成果について詳しく解説します。

事例企業:株式会社プロアクティブリンク

株式会社プロアクティブリンクは、創業50年を超える老舗でありながら、常に時代の変化に合わせた事業展開を行ってきた企業です。近年の市場競争の激化と、デジタル技術の急速な進化に対応するため、全社的に「イノベーションの創出」と「組織エンゲージメントの向上」を経営の最重要課題として掲げていました。

多様な働き方導入の背景・目的

同社では、以前より従業員のモチベーションや生産性に関する課題意識がありました。特に、若手・中堅層を中心に「やらされ感」や「成長実感の希薄化」といった声が散見され、これが創造性の停滞や離職リスクの増大につながっているのではないかと懸念されていました。

分析の結果、これらの課題の根源には、過度なトップダウン型の意思決定プロセスと、結果のみに焦点を当てた旧来型の評価制度があると考えられました。従業員は与えられたタスクをこなすことに注力し、自らのアイデアを提案したり、新しいことへ挑戦したりする機会が少なく、内発的な動機付けが働きにくい状況でした。

そこで同社は、「従業員一人ひとりの内発的動機付けを高め、自律性と創造性を最大限に引き出すこと」を目的とした働き方改革プロジェクトを立ち上げました。これにより、変化に強い、ボトムアップ型のイノベーションが生まれる組織文化を醸成し、持続的な成長を実現することを目指しました。

具体的な取り組み内容

株式会社プロアクティブリンクでは、内発的動機付け向上のため、人事評価制度、マネジメント、組織文化の三位一体での改革に取り組みました。

1. 評価制度の改革:成果とプロセスの両面を評価

従来の目標管理制度(MBO)を刷新し、成果目標の達成度だけでなく、目標達成に向けた「プロセス」、「挑戦」、「チームへの貢献」、「組織文化への寄与」といった要素を新たに評価項目に含めました。特に、「挑戦」に関しては、成功・失敗に関わらず、その取り組み自体を評価する枠組みを設けました。

また、評価基準をより明確化し、被評価者との擦り合わせやフィードバックの質を向上させるため、評価者(管理職)向けの研修を徹底しました。これにより、従業員が自身の行動がどのように評価につながるのかを理解しやすくなり、内発的な行動を促す仕組みを構築しました。

2. マネジメントスタイルの変革:支援型・コーチング型へのシフト

管理職に対し、従来の指示・命令中心のスタイルから、部下の自律性を尊重し、成長を支援するコーチング型のマネジメントへの転換を促しました。定期的な1on1ミーティングを必須化し、単なる進捗確認ではなく、部下のキャリアや内発的な興味、挑戦したいアイデアなどについて深く対話する時間を設けました。

また、部下への権限移譲を積極的に行い、意思決定の機会を与えることで、当事者意識と責任感を醸成しました。管理職自身も、部下の成功を支援することが自身の評価にもつながるような評価体系に見直し、マネジメント変革を促進しました。

3. 組織文化の醸成:心理的安全性の高い環境作り

従業員が失敗を恐れずに新しいアイデアを提案したり、困難な課題に挑戦したりできるような文化を醸成することに注力しました。「失敗は学びの機会である」というメッセージを経営層が繰り返し発信し、失敗事例からも学びを共有する機会を設けました。

さらに、部署や役職を超えたオープンなコミュニケーションを奨励するため、社内SNSの活用や、カジュアルなアイデア交換会の開催などを推進しました。これにより、組織全体の心理的安全性を高め、従業員が自由に発言し、多様な視点を取り入れることができる環境を整備しました。

導入プロセス

働き方改革プロジェクトは、人事部が中心となり、経営企画部、各事業部の代表者からなる全社横断のプロジェクトチームを発足させ、約1年をかけて段階的に導入されました。

まず、経営層とのワークショップを通じて改革の目的と方向性を明確化しました。次に、従業員代表や労働組合との対話を通じて現場の意見を吸い上げ、制度設計に反映させました。

評価制度やマネジメント研修の設計段階では、外部の専門コンサルタントの支援も活用しました。評価制度の変更については、全従業員向けの説明会を複数回開催し、質疑応答の時間を十分に設けることで、理解と納得度の向上に努めました。管理職向けの研修は、座学だけでなくロールプレイングや実践的なコーチング演習を取り入れ、スキル習得を支援しました。

パイロット導入として、特定の部署で先行して新制度を導入し、課題を抽出した上で全社展開へと進めました。評価システムも既存の人事システムと連携させ、従業員が自身の目標設定や評価結果を容易に確認できる環境を整備しました。

直面した課題と、それに対する具体的な解決策

改革の過程で、いくつかの課題に直面しました。

課題1:管理職の意識・スキル変革の難しさ

長年染み付いた指示型マネジメントスタイルを変えることへの抵抗感や、コーチングスキルの不足が見られました。

解決策: * 管理職向け研修を単発で終わらせず、複数回に分けて実施し、フォローアップのための個別コーチングセッションも提供しました。 * 成功事例を共有するワークショップを開催し、他の管理職の実践例から学ぶ機会を増やしました。 * 管理職の評価項目に「部下の成長支援」「内発的動機付けへの貢献」といった要素を明確に盛り込み、行動変容を促しました。

課題2:新しい評価制度への理解浸透

特にプロセスや挑戦を評価することに対し、「どう評価されるのか不透明」「結果が出なければ意味がないのでは」といった疑問の声がありました。

解決策: * 評価ガイドラインを詳細に作成し、具体的な行動例を示すなど、評価基準の「見える化」を徹底しました。 * 評価者・被評価者間の評価面談の重要性を改めて強調し、丁寧な対話とフィードバックを推奨しました。 * 定期的に説明会やQ&Aセッションを開催し、従業員の疑問や不安に直接応じる機会を設けました。

課題3:挑戦失敗への懸念

失敗を評価すると言われても、実際に挑戦して失敗した場合に不利益が生じるのではないか、と躊躇する従業員が見られました。

解決策: * 経営層が率先して自身の失敗談やそこからの学びを共有するメッセージを発信し、失敗を恐れない文化を醸成しました。 * 「チャレンジ賞」のような表彰制度を設け、成果の有無に関わらず、意欲的な挑戦自体を評価・称賛する仕組みを導入しました。 * 失敗した場合でも、その原因分析や学びを丁寧にフィードバックし、次の挑戦につなげるためのサポート体制を強化しました。

導入による効果・成果

これらの取り組みの結果、株式会社プロアクティブリンクでは、以下のような効果・成果が得られました。

取り組みが成功した要因分析

株式会社プロアクティブリンク様の事例が成功した主な要因は以下の通りと考えられます。

今後の展望

株式会社プロアクティブリンク様では、今後も内発的動機付けを重視した働き方改革を推進していく計画です。具体的には、従業員の多様なキャリアパスを支援するための社内メンター制度の拡充や、個々の内発的な興味と事業のニーズを結びつけるためのタレントマネジメントシステムの活用強化などを検討しています。

また、評価制度についても、より客観性を高めるために360度評価の導入や、AIを活用したパフォーマンス分析の可能性を探っていく予定です。これらの取り組みを通じて、従業員一人ひとりが自身の可能性を最大限に発揮し、組織全体の持続的な成長へとつなげていくことを目指しています。

まとめ

株式会社プロアクティブリンク様の事例は、従業員の内発的動機付けを高めることが、組織の自律性、創造性、そしてエンゲージメント向上に大きく貢献することを示しています。評価制度やマネジメントスタイルの改革、そして心理的安全性の高い文化醸成は、従業員の主体的な働き方を促進し、変化に強く、イノベーションを生み出す組織を作るための重要な要素となります。

多様な働き方の導入・推進をご検討されている企業の人事担当者の皆様にとって、本事例が内発的動機付けを重視した改革のヒントとなり、自社の働き方改革を推進する一助となれば幸いです。