株式会社生産性向上パートナーズ:非効率な業務プロセスを徹底的に見直し、デジタル化推進で残業削減と柔軟な働き方を両立させた事例
はじめに
多くの企業で働き方改革が推進される中、「制度を導入しても、現場の非効率が解消されず効果が出にくい」「柔軟な働き方を推進したいが、既存の業務プロセスが壁になる」といった課題に直面されている人事担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、株式会社生産性向上パートナーズが、非効率な業務プロセスを徹底的に見直し、デジタル化を強力に推進することで、長年の課題であった長時間労働体質を改善し、残業削減と多様で柔軟な働き方の両立、そして組織全体の生産性向上を実現した事例をご紹介します。単なるツールの導入に留まらない、抜本的な業務改革のプロセスとその成果、そして成功の要因について、具体的に解説します。
多様な働き方導入の背景・目的
株式会社生産性向上パートナーズでは、長年にわたり特定の部門や時期に長時間労働が常態化していることが課題となっていました。要因を分析した結果、対面での会議や承認に時間がかかりすぎる、資料作成やデータ入力といった定型業務に多くの時間を割かれている、部門間の情報共有が非効率で手戻りが多い、といった非効率な業務プロセスが多く存在することが明らかになりました。
これらの非効率は、従業員の疲弊を招き、創造的な業務への時間を奪うだけでなく、リモートワークを含む柔軟な働き方の導入・定着を妨げる要因ともなっていました。経営層は、持続的な企業成長には従業員のエンゲージメントと生産性の向上、そして変化に強い組織文化の醸成が不可欠であると判断。そのためには、抜本的に業務プロセスを見直し、デジタル技術を活用して非効率を排除することが最優先課題であると位置づけました。
具体的な目的としては、以下の3つが掲げられました。
- 長時間労働の是正と残業時間の削減: 業務効率化により、不要な残業を徹底的に削減する。
- 多様な働き方の実現と定着: リモートワークや時短勤務など、従業員一人ひとりが自身の状況に合わせて柔軟に働ける環境を整備する。
- 組織全体の生産性向上: 従業員が付加価値の高い業務に集中できる時間を増やし、組織としての成果を最大化する。
これらの目的達成を通じて、従業員満足度とエンゲージメントを高め、優秀な人材の確保・定着につなげることを目指しました。
具体的な取り組み内容
1. 全社的な業務プロセスの棚卸しと可視化
まず、全社各部門で実施されている業務を詳細に洗い出し、フローチャートなどを用いて可視化しました。これにより、重複している業務、ボトルネックとなっているプロセス、意思決定に時間を要している部分などが明確になりました。特に、会議、承認プロセス、情報共有、定型業務に焦点を当てて分析を行いました。
2. 非効率なプロセスの削減・簡素化・デジタル化
可視化された業務プロセスに基づき、抜本的な見直しを行いました。
- 会議改革: 目的が不明確な会議、参加者が多すぎる会議、結論が出ない会議を削減。アジェンダの事前共有、制限時間の厳守、議事録の即時共有を徹底。また、報告のみの会議はチャットや共有ドキュメントでの情報共有に置き替えました。
- 承認プロセスの見直し: 複雑で多段階な承認フローを簡素化。電子承認システムを導入し、どこからでもスピーディーに承認できる体制を構築。責任範囲を明確にし、不要な「根回し」を削減しました。
- 定型業務の自動化: R P A(Robotic Process Automation)ツールを導入し、データ入力、レポート作成、メール送付といった反復性の高い定型業務を自動化しました。
- 情報共有基盤の整備と活用: クラウドベースのファイル共有サービス、プロジェクト管理ツール、社内W I K Iなどを導入・活用を徹底。情報が属人化せず、必要な情報に誰でも・どこからでもアクセスできる環境を整備しました。ドキュメント作成の標準化も推進しました。
- ペーパーレス化の推進: 電子契約システム、クラウドサインシステム、オンライン申請システムなどを導入し、押印や郵送が必要な手続きを極力削減しました。
3. ITインフラの整備とツール活用支援
上記の取り組みを支えるため、高速な社内ネットワーク、セキュアなリモートアクセス環境、クラウドサービスの安定的な運用を可能にするITインフラを整備しました。また、導入した各種ツールの操作研修だけでなく、「ツールの活用によって、どのような業務を効率化できるか」「どのように使うと非効率が解消されるか」といった実践的なワークショップを繰り返し実施し、従業員のデジタルスキル向上と定着を図りました。
導入プロセス
本取り組みは、経営企画部門が主導し、人事部門、IT部門、そして各部門の代表者が参加する全社横断プロジェクトチームを設置して推進されました。
- 現状分析と目標設定(3ヶ月): 各部門へのヒアリング、業務フローの可視化、非効率の洗い出しを実施。具体的な残業削減目標、効率化目標を設定しました。
- ** pilot 実施(6ヶ月):** 特定の部門や業務プロセスを対象に、会議改革、電子承認システム導入、一部定型業務のR P A化などを試験的に実施。効果検証と課題抽出を行いました。
- 全社展開と定着支援(継続): pilot で得られた知見を元に、取り組み内容をブラッシュアップし、全社へ展開。部門ごとの特性に応じたカスタマイズも可能としました。導入したツールの活用研修や、業務プロセス改革ワークショップを継続的に実施し、従業員の意識改革とスキル向上を支援しました。定期的に各部門から成功事例を募り、社内報やイントラネットで共有することで、取り組みのモチベーション維持を図りました。
- 効果測定と改善(継続): 定期的に残業時間、会議時間、各種申請・承認にかかる時間、従業員アンケートなどを実施し、効果を測定。改善点があれば、プロセスの再見直しやツール活用方法の指導を行いました。
直面した課題と、それに対する具体的な解決策
課題1:現場からの抵抗と変化への戸惑い
長年慣れ親しんだ業務のやり方を変えることへの抵抗感や、新しいツールを使うことへの不安が多くの従業員に見られました。
- 解決策: プロジェクトの初期段階から、なぜこの改革が必要なのか、改革によってどのようなメリットがあるのか(残業削減、時間にゆとりができる、柔軟に働けるなど)を丁寧に説明し、目的への共感を促しました。一方的な指示ではなく、現場の声を聴くヒアリング会やワークショップを頻繁に開催し、改善提案を吸い上げる仕組みを作りました。また、各部門に「改革推進リーダー」を任命し、現場での疑問解消や定着支援を担ってもらいました。
課題2:ツールを導入しても使いこなせない、効果が出ない
高機能なツールを導入したものの、一部の従業員しか使いこなせず、期待したほどの効果が出ないケースが発生しました。
- 解決策: ツールの「使い方」だけでなく、「ツールを使って何ができるか」「自分の業務のどの部分を効率化できるか」を具体的にイメージできるような実践的な研修や、個別相談会を実施しました。また、各部門でツールを積極的に活用し、成果を上げている従業員を「チャンピオン」として表彰し、そのノウハウを全社で共有する機会を設けました。単にツールを導入するのではなく、「ツールを活用した新しい働き方・進め方」を定着させることに注力しました。
課題3:部門間連携が必要なプロセスの改革が進まない
複数の部門を跨ぐような業務プロセスの見直しは、関係者間の調整に時間を要し、改革が停滞しがちでした。
- 解決策: 部門横断プロジェクトチームが積極的にファシリテーションを行い、関係部門の責任者同士が直接対話できる場を設けました。全社的な効率向上という共通目標を常に意識してもらうよう働きかけ、特定の部門だけが得をするのではなく、関係者全体にメリットがある改革案になるよう調整を重ねました。経営層が定期的に進捗を確認し、必要な指示を出すことで、部門間の壁を越えた改革を後押ししました。
導入による効果・成果
本取り組みの結果、株式会社生産性向上パートナーズは以下のような効果・成果を上げることができました。
- 残業時間の劇的な削減: 全社平均で、年間残業時間が改革前と比較して約35%削減されました。特に間接部門での削減効果が顕著でした。
- 会議時間の削減: 一人あたりの週平均会議時間が、改革前の約8時間から約5時間へと約3時間削減されました。
- 柔軟な働き方の拡大: リモートワークが全社的に浸透し、週に数回のリモート勤務を組み合わせたハイブリッドワークが標準的な働き方となりました。また、コアタイムのないスーパーフレックス制度の活用率も向上しました。
- 従業員満足度とエンゲージメントの向上: 定期的な従業員アンケートで、「業務の非効率が減り、本来の業務に集中できるようになった」「自分の時間をコントロールしやすくなった」といった肯定的な意見が増加。「働きがい」に関するスコアも向上しました。
- 生産性の向上: 具体的な数値としては計測が難しい部分もありますが、プロジェクト納期遅延率の改善、新規事業立ち上げスピードの向上など、組織全体の生産性が向上したことを示す兆候が見られました。
これらの成果は、単に時間を削減しただけでなく、従業員がより自律的に、より創造的に働ける環境が整備されたことによるものです。
取り組みが成功した要因分析
本取り組みが成功した主な要因は以下の通りです。
- 経営層の強いコミットメント: 単なる号令ではなく、経営層自身が積極的に改革の必要性を発信し、プロジェクトの進捗管理に深く関与したことが、取り組みを加速させました。
- 「ツール導入」ではなく「プロセス改革」に焦点を当てたこと: ツールはあくまで手段であり、目的は業務プロセスそのものを効率化し、働き方を変えることであるという認識を全社で共有できたことが重要でした。
- 現場を巻き込んだボトムアップのアプローチ: 現場の課題意識に基づいた改善提案を吸い上げ、小さく始めて成功事例を共有することで、改革への主体性を育みました。
- IT部門と業務部門の密な連携: ITツール選定・導入と、実際の業務への適用・定着が一体となって進められたことが効果を発揮しました。
- 継続的な効果測定と改善活動: 一度改革して終わりではなく、定期的に効果を測定し、課題が見つかれば PDCA サイクルを回して改善を続けたことが、成果の持続につながりました。
今後の展望や継続的な取り組み
株式会社生産性向上パートナーズでは、今回の業務プロセス改革とデジタル化で得られた成果を基盤として、さらなる働き方改革を進めていく計画です。具体的には、データ分析を活用した更なる業務効率化の推進、従業員のスキルアップ支援と連携したRPA等活用の拡大、ナレッジマネジメントシステムの強化による組織知の活用促進などを検討しています。
また、改革を一時的なものにせず、変化を恐れず常に最善の方法を模索する「改善文化」を組織に根付かせるための取り組みを継続していく方針です。
まとめ
株式会社生産性向上パートナーズの事例は、働き方改革を単なる制度導入やツールの導入で終わらせず、業務プロセスそのものにメスを入れ、デジタル技術を効果的に活用することで、長時間労働の是正、多様な働き方の実現、そして生産性向上という複数の目的を同時に達成できることを示しています。
特に、「非効率な業務プロセスを徹底的に洗い出し、改善策を講じること」「デジタルツールは単なる導入ではなく、業務への定着・活用を徹底的に支援すること」「経営層のコミットメントと現場を巻き込むアプローチの組み合わせ」が成功の鍵となりました。
自社の働き方改革で行き詰まりを感じている人事担当者の方は、ぜひ業務プロセス改革とデジタル化を組み合わせたアプローチをご検討されてみてはいかがでしょうか。本事例が、皆様の会社の働き方改革推進の参考になれば幸いです。