株式会社リージョナルコネクト:地理的制約を克服し、拠点間の壁をなくした働き方改革と組織一体感向上事例
導入:なぜ今、拠点間の壁をなくす働き方改革が必要なのか
日本の多くの企業では、本社機能が都市部に集中し、地方に支店や工場、開発拠点などを置くケースが多く見られます。株式会社リージョナルコネクト様も例外ではなく、首都圏に本社を置き、全国に複数の営業拠点および開発センターを構えていました。しかし、近年、地方拠点の従業員高齢化、新規採用の困難さ、本社との情報格差や一体感の不足といった課題が顕在化していました。
本社主導で進められていた働き方改革も、その恩恵が地方拠点まで十分に浸透しているとは言えない状況でした。特に、柔軟な働き方の選択肢(リモートワーク、フレックスタイムなど)の活用度、人事評価の公平性に対する疑問、そして拠点間での情報共有やコミュニケーションの円滑さに課題を抱えていたのです。
こうした状況に対し、リージョナルコネクト様は「地理的な制約に捉われず、全従業員が同じ方向を向き、最大限のパフォーマンスを発揮できる組織」を目指し、拠点間の壁を克服するための包括的な働き方改革プロジェクトを立ち上げました。本記事では、リージョナルコネクト様がどのようにこの課題に取り組み、どのような成果を上げたのか、その具体的なプロセスと結果をご紹介します。
多様な働き方導入の背景・目的:地理的、組織的な隔たりが生む課題の解消
リージョナルコネクト様が働き方改革を本格化させた背景には、主に以下の目的がありました。
- 地方拠点の活性化と優秀人材の確保・定着: 地方での採用競争力の低下や従業員の流出を防ぎ、長期的に活躍できる人材を確保・定着させること。
- 全社一体感の醸成と組織力向上: 本社と地方拠点間、あるいは地方拠点同士の情報格差や心理的な距離を解消し、共通の目標達成に向けた連携を強化すること。
- 公平かつ柔軟な評価制度の構築: 地理的な距離や勤務形態に関わらず、従業員の貢献度や成果が適正に評価される仕組みを整備すること。
- 生産性向上: 移動時間の削減、効率的な情報共有、迅速な意思決定により、組織全体の生産性を向上させること。
これらの目的を達成するため、同社は単なる制度導入に留まらず、テクノロジー活用、組織文化、人事制度の三位一体での改革を目指しました。
具体的な取り組み内容:テクノロジー、制度、文化の統合アプローチ
リージョナルコネクト様が実施した主な取り組みは以下の通りです。
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コミュニケーション・情報共有基盤の強化:
- 全拠点の会議室への高品質なWeb会議システムおよび大型モニターの設置。
- 全社共通のビジネスチャットツールの導入・利用促進。
- 組織横断型のナレッジ共有プラットフォームの導入と、積極的な情報投稿・検索を奨励する文化醸成。
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人事制度および評価制度の改革:
- 勤務場所(本社か地方拠点か、自宅かオフィスか)に依存しない、成果を重視した評価制度への見直し。
- 拠点間での人材交流を促進するための社内公募制度、プロジェクト単位での拠点横断アサインメント制度の導入。
- 地方拠点従業員向けに、サテライトオフィスやコワーキングスペースの利用補助制度を拡充。
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多拠点マネジメントスキルの強化と文化醸成:
- マネージャー層に対し、リモート・多拠点チーム運営、オンラインでの1on1スキル、心理的安全性に関する研修を実施。
- オンラインツールを活用した全社・拠点間交流イベント(タウンホールミーティング、懇親会など)を定期的に開催。
- 拠点横断プロジェクトチームの組成を奨励し、共通の課題解決に取り組む機会を創出。
導入プロセス:横断チームによる推進と段階的な展開
この大規模な改革は、本社人事部門と各拠点代表者からなる横断プロジェクトチームによって推進されました。
- 現状分析と課題特定: 各拠点への丁寧なヒアリング、全従業員へのアンケート調査を実施し、地理的・組織的な課題を具体的に特定しました。
- 計画策定と合意形成: 分析結果に基づき、上記「取り組み内容」の骨子を策定。横断プロジェクトチームで複数回議論を重ね、各拠点の意見を反映させながら計画を具体化し、経営会議での承認を得ました。
- パイロット導入: 一部の拠点と部署で、新しいツール導入や制度の一部先行適用を実施。効果測定とフィードバック収集を行いました。
- 全社展開と定着支援: パイロット導入での学びを活かし、全社に順次展開。ツールの利用マニュアル作成、オンライン研修の実施、FAQサイトの開設など、従業員が新しい働き方やツールに慣れるための支援を手厚く行いました。
- 継続的なフォローアップと改善: 定期的な従業員意識調査やマネージャーへのヒアリングを通じて、取り組みの効果を測定し、課題が見つかれば迅速に改善策を講じる体制を構築しました。
直面した課題と具体的な解決策
改革の過程では、いくつかの課題に直面しました。
- 課題1:拠点間の温度差と変化への抵抗
- 解決策:横断プロジェクトチームが各拠点を訪問し、改革の目的や期待される効果について直接説明する機会を設けました。また、各拠点から選出された「働き方改革推進リーダー」が、現場での疑問解消や変化への適応をサポートしました。
- 課題2:オンラインコミュニケーションのみでの限界
- 解決策:Web会議システムでの「雑談タイム」設定、チャットツールの特定チャンネルでの非業務関連の交流促進、そして年に数回の全社・拠点合同でのオフライン交流イベントの開催など、デジタルとリアルの両面でのコミュニケーション機会を意図的に増やしました。
- 課題3:新しい評価制度への不安や不公平感
- 解決策:新しい評価制度の設計思想、評価基準、運用方法について、全従業員を対象とした詳細な説明会を複数回実施しました。また、マネージャー向けの評価者研修を強化し、公平な評価を行うためのスキル向上を図りました。評価に関する不公平感については、異議申し立てプロセスの明確化や、評価結果に関する個別フィードバックの質の向上に努めました。
導入による効果・成果:数値と定性の両面での改善
これらの取り組みの結果、リージョナルコネクト様では以下のような効果・成果が見られました。
- 従業員エンゲージメントの向上: 特に地方拠点従業員のエンゲージメントスコアが、改革前と比較して約15%向上しました(全社従業員意識調査に基づく)。「会社との一体感を感じる」「情報共有がスムーズになった」といった肯定的な意見が増加しています。
- 離職率の低下: 全社平均の離職率は大きな変化はなかったものの、特に若手を中心とした地方拠点の離職率が、改革前と比較して約5%低下しました。
- 情報共有・意思決定スピードの向上: ナレッジ共有プラットフォームの活用により、必要な情報へのアクセス時間が短縮され、チャットツールの活用で簡易的なコミュニケーションや意思決定が迅速化しました。社内アンケートでは、情報探索時間が平均で約20%削減されたという結果が出ています。
- 生産性の向上: 不要な出張や移動が減り、Web会議の活用により会議時間の効率化が進みました。具体的な数値としては算出しにくいものの、マネージャー層からは「拠点間の連携強化により、プロジェクト推進がスムーズになった」という声が多く聞かれます。
取り組みが成功した要因分析
リージョナルコネクト様の事例が成功した主な要因は以下の通りです。
- 経営層の強いコミットメント: トップが本改革の重要性を繰り返し発信し、必要な投資(システム導入、研修など)を惜しまなかったことが、全社的な推進力となりました。
- 拠点横断プロジェクトチームの機能: 本社と地方拠点の代表者が一体となって計画策定から実行、改善までを担ったことで、各拠点の状況や意見が反映されやすく、当事者意識が高まりました。
- 丁寧かつ継続的なコミュニケーション: 制度やツール導入の説明に加え、なぜ働き方改革が必要なのか、それが従業員自身にどのようなメリットをもたらすのかを繰り返し伝え、対話の機会を設けたことが、変化への抵抗を和らげました。
- テクノロジーの適切な活用と定着支援: 最新ツールを導入するだけでなく、従業員が抵抗なく使えるように操作研修やマニュアルを整備し、利用を奨励する施策(利用率をKPIに設定するなど)を行ったことが効果を最大化しました。
今後の展望:さらなる一体感の追求と新しい価値創造
リージョナルコネクト様は、今回の働き方改革を終着点とは考えていません。今後は、さらにテクノロジー(例えば、VR/ARを活用した仮想オフィスや研修)を導入し、地理的な距離をより意識させない環境づくりを進める計画です。また、地方拠点が持つ地域ごとの特色や強みを活かした新しいビジネスや地域貢献活動と連携させ、企業の持続的な成長と従業員の多様なキャリア形成を両立させていくことを目指しています。
本事例は、単に場所や時間にとらわれない働き方を導入するだけでなく、それに伴う組織的な課題、特に拠点間の連携や一体感の課題に対して、テクノロジー、人事制度、そして文化醸成という多角的なアプローチで取り組むことの重要性を示唆しています。多様な働き方の推進を検討されている人事担当者の皆様にとって、具体的な課題解決と効果測定の参考となる事例と言えるでしょう。