株式会社インテリジェントワークス:リモート下オンボーディング刷新で実現した早期戦力化と新入社員エンゲージメント向上事例
はじめに
多様な働き方が浸透するにつれて、オフィスへの出社を前提としないリモートワーク環境下での人材育成、特に新入社員や中途社員のオンボーディングが重要な課題となっています。物理的な距離がある中で、組織文化へのスムーズな適応を促し、早期に戦力として活躍してもらうためには、従来のオンボーディングプロセスを根本から見直す必要があります。
本記事では、総合人材サービスを提供する株式会社インテリジェントワークスが、リモートワーク移行に伴うオンボーディングの課題を克服し、新入社員・中途社員の早期戦力化とエンゲージメント向上を実現した事例をご紹介します。同社の具体的な取り組み内容、直面した課題、そしてそこから得られた効果や成功要因は、多くの企業にとって実践的な学びとなるでしょう。
多様な働き方導入の背景・目的
株式会社インテリジェントワークスでは、コロナ禍を機に全社的にリモートワークを推進しました。これにより従業員の柔軟な働き方が可能となり、通勤時間削減などによるワークライフバランスの改善は進んだ一方で、特に新しく入社する社員のオンボーディングにおいて、いくつかの課題が顕在化しました。
具体的には、 * オフィスでの偶発的な交流や質問機会が失われたことによる、組織への心理的な帰属意識の醸失。 * 必要な情報(社内システム、業務マニュアル、企業文化など)へのアクセスや理解の遅れ。 * 受け入れ部署側の、リモート環境下での育成ノウハウ不足。 * 結果として、新入社員・中途社員が早期に職場に馴染めず、本来のパフォーマンスを発揮するまでに時間がかかる、あるいはエンゲージメントが低下するといった状況が見受けられるようになりました。
これらの課題を解決し、リモート環境下でも新しい仲間がスムーズに組織に溶け込み、早期に最大限の能力を発揮できる状態を目指すため、オンボーディングプロセスの抜本的な見直しが経営課題として認識されました。目的は、「新入社員・中途社員の早期戦力化促進」と「エンゲージメントおよび定着率の向上」でした。
具体的な取り組み内容
株式会社インテリジェントワークスは、上記目的達成のために、多角的なオンボーディングプログラムを設計・導入しました。
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体系的なオンライン研修プログラムの構築:
- 企業文化、事業内容、各部署の役割、コンプライアンスなど、基本的なオリエンテーションを全てオンライン形式で実施。
- 社内システムやツール利用に関するハンズオン形式のオンライン研修を導入。
- 必要な知識やスキルを習得できるよう、動画コンテンツやeラーニング教材を整備し、入社前にアクセス可能な環境を構築。
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「バディ制度」の導入と強化:
- 新入社員一人に対し、年齢や部署が近い先輩社員が「バディ」としてアサインされる制度を導入。
- バディは、日々の業務に関する質問対応だけでなく、非公式なコミュニケーションを通じて心理的な安心感を提供。
- バディには、オンボーディング期間中に週に数回の短いオンラインミーティングを設定し、困りごとの早期発見・解決をサポートする役割を付与。バディ向けには、傾聴スキルやリモート下でのコミュニケーションに関する研修を実施。
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「情報ハブ」としての社内ポータルの整備:
- オンボーディングに必要なあらゆる情報(組織図、連絡先リスト、よくある質問、業務マニュアル、社内用語集など)を一元管理するポータルサイトを構築。
- キーワード検索機能を強化し、必要な情報に誰でもすぐにアクセスできるように改善。
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受け入れ部署との連携強化:
- 入社者受け入れ前に、受け入れ部署の管理職やチームメンバー向けに、オンボーディングの目的や具体的なサポート方法、バディとの連携について説明会を実施。
- オンボーディング期間中の進捗や課題を、人事と受け入れ部署間で定期的に情報共有する仕組みを構築。
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歓迎イベントのオンライン開催:
- 入社同期同士、あるいは既存社員との交流を目的としたオンライン懇親会やランチ会などを企画・実施。非公式な場での人間関係構築を促進。
導入プロセス
オンボーディングプロセスの刷新は、人事部が中心となり、IT推進部、各事業部の協力を得て進められました。
- 現状分析と課題特定: リモートワーク移行後の入社者や受け入れ部署へのヒアリング、アンケートを通じて、既存プロセスの課題を詳細に分析。
- 改善施策の設計: 特定された課題に基づき、上記の具体的な取り組み内容を設計。特にバディ制度の導入は、既存社員の協力が不可欠であるため、制度設計段階から現場の意見を取り入れました。
- テスト導入とフィードバック: 一部の入社者を対象に新しいプログラムをテスト導入し、入社者およびバディ、受け入れ部署からフィードバックを収集。
- プログラムの改善: テスト導入で得られたフィードバックを基に、プログラム内容や運用方法を改善。
- 全社展開: 改善されたプログラムを全社に展開。バディ向け研修や、受け入れ部署への説明会を実施し、関係者の理解と協力を得ながら進めました。
- 効果測定と継続的な改善: KPI(早期戦力化までの期間、エンゲージメントスコア、試用期間中離職率など)を設定し、定期的に効果測定を実施。入社者アンケートや個別面談などを通じて継続的にフィードバックを収集し、プログラムの改善を続けています。
推進体制としては、人事部内にオンボーディング専任チームを設置し、プログラムの企画・運営、バディ制度の管理、受け入れ部署との連携などを一元的に担いました。
直面した課題と、それに対する具体的な解決策
課題1: オンラインのみでの人間関係構築の難しさ、雑談や質問がしにくい雰囲気。 解決策1: 公式なバディ制度に加え、バーチャルコーヒーチャットやオンラインランチ会など、非公式な交流機会を意図的に設定しました。また、Slackなどのチャットツールに「〇〇さんへの質問チャンネル」のような気軽に質問できる専用チャンネルを設置し、バディ以外の社員もサポートできるようにしました。
課題2: リモート環境下での情報過多または不足。必要な情報を見つけにくい。 解決策2: 前述の「情報ハブ」である社内ポータルを徹底的に整備し、キーワード検索機能を強化。さらに、バディやチームメンバーが、入社者がどの情報にアクセスすべきか、どの順序で学ぶべきかを具体的にガイドする仕組みを強化しました。
課題3: バディや受け入れ部署のオンボーディング業務負荷が増加してしまうこと。 解決策3: バディ向けにオンボーディングの目的と重要性を改めて伝え、役割と期待値を明確化する研修を実施。オンボーディング期間中のバディの業務時間の一部を評価に反映させるなどの検討も行いました。また、体系的なオンライン研修や情報ハブの整備により、バディや受け入れ部署が繰り返し説明する手間を削減し、より個別具体的なサポートに時間をかけられるように工夫しました。
導入による効果・成果
新しいオンボーディングプログラムの導入により、以下のような具体的な効果・成果が得られました。
- 早期戦力化期間の短縮: プログラム導入後に入社した社員の平均的な「一人で業務を遂行できるレベル」に達するまでの期間が、導入前に比べて約20%短縮されました。(人事部調べ)
- 新入社員・中途社員のエンゲージメント向上: プログラム修了後のアンケートによると、「会社やチームへの貢献意欲」「この会社で長く働きたいか」といった項目に対する回答の肯定的割合が、導入前に比べて平均15ポイント向上しました。特に、バディ制度利用者からの満足度が高い結果となりました。
- 試用期間中の離職率低下: 新しいオンボーディングプログラムが適用された期間の試用期間中離職率は、導入前の同期間と比較して約30%減少しました。
- 受け入れ部署のオンボーディング効率化: 定量的なデータ取得は難しいものの、受け入れ部署の管理職からは「以前よりスムーズに情報伝達ができるようになった」「バディがいることで、細かい質問対応の負担が減った」といった定性的な改善の声が多数寄せられました。
取り組みが成功した要因分析
本取り組みが成功した主な要因は以下の通りと考えられます。
- 経営層の強いコミットメント: リモート下オンボーディングの重要性が経営課題として認識され、必要な予算や人員、他部署への協力を得るための後押しがありました。
- 現場の課題に基づく施策設計: 入社者や受け入れ部署からの具体的な声(課題)を丁寧に拾い上げ、それらを解決するための施策を設計しました。
- 体系的なプログラムと人的サポートの組み合わせ: オンライン研修や情報ハブといった「仕組み」によるサポートと、バディ制度のような「人」によるきめ細やかなサポートを組み合わせた点が効果的でした。
- バディに対する丁寧なフォロー: バディの役割を明確にし、必要な研修を提供し、その貢献を適切に評価しようとする姿勢が、制度の定着につながりました。
- 継続的な効果測定と改善: 導入して終わりではなく、定期的な効果測定と関係者からのフィードバック収集に基づき、プログラムを継続的に改善している点が重要です。
今後の展望
株式会社インテリジェントワークスでは、今後もオンボーディングプログラムのさらなる改善を進める予定です。具体的には、部署ごとの特性に合わせたカスタマイズオプションの提供や、VR/メタバースを活用したバーチャルオフィスツアーなど、最新技術を取り入れた取り組みも検討しています。また、オンボーディング期間終了後も、継続的なエンゲージメント維持・向上のための施策と連携を強化していく方針です。
まとめ
株式会社インテリジェントワークスのリモート下オンボーディング刷新事例は、多様な働き方における人材育成の課題に対し、体系的なプログラム設計と人的サポートの組み合わせで高い成果を上げた好例と言えます。特に、現場の声を活かした施策設計、バディ制度のような人的な関わりの重視、そして継続的な改善サイクルは、多くの企業がリモートワーク環境下でのオンボーディングを成功させる上で参考になるのではないでしょうか。
リモートワークが常態化する現代において、新しい仲間を迎え入れ、彼らが組織の一員として早期に活躍できるよう支援することは、組織全体の生産性向上と持続的な成長に不可欠です。本事例が、貴社のオンボーディングプロセス改善の一助となれば幸いです。