株式会社レジリエンスワークス:副業解禁後に直面した労務・セキュリティ・評価の壁を乗り越え、自律性とエンゲージメントを向上させた事例
株式会社レジリエンスワークスに学ぶ:副業解禁後の課題を克服し、組織と従業員の自律性を高める方法
人事担当者の皆様にとって、「多様な働き方」の推進は喫緊の課題であると同時に、様々な制度設計や運用上の懸念を伴うテーマかと存じます。特に、近年注目されている副業・兼業制度は、従業員のスキルアップや自律的なキャリア形成を促す potent な手段である一方、導入後に unforeseen な課題に直面するケースも少なくありません。
本記事では、副業解禁を積極的に推進した結果、当初想定していなかった労務管理、情報セキュリティ、人事評価といった「壁」に直面しながらも、それらを粘り強く乗り越え、制度を成功に導いた株式会社レジリエンスワークスの事例をご紹介します。同社の具体的な取り組みから、貴社における副業制度導入・運用のヒントを得られることでしょう。
多様な知見と従業員の成長を求めた副業解禁
株式会社レジリエンスワークスでは、事業の不確実性が高まる現代において、従業員一人ひとりが自律的に学び続け、変化に対応できる力を養うことが不可欠だと考えていました。また、社外で得られた多様な知識や経験が、既存事業のイノベーションや新たな視点をもたらすことにも期待していました。
こうした背景から、20XX年、同社は原則として全従業員を対象とした副業・兼業の解禁を決定しました。これは単なる福利厚生ではなく、「個人と組織の継続的な成長」を目指す戦略的な人事施策の一環として位置づけられました。
制度導入と運用開始:最初の壁
制度導入にあたっては、事前に以下のような準備を進めました。
- 副業に関する規程の策定(申請方法、承認基準、禁止事項など)
- 従業員向けのガイドライン作成と説明会の実施
- 申請・承認プロセスのデジタル化
しかし、実際に運用を開始すると、想定していなかった、あるいは予見していたものの具体的な対応に苦慮する課題が顕在化してきました。特に人事部門にとって大きな壁となったのは、以下の3点でした。
- 労務管理の複雑化:
- 本業と副業を通算した労働時間の正確な把握が難しく、過重労働リスクへの懸念が高まりました。
- 従業員が副業で心身ともに疲弊し、本業に支障を来す可能性も懸念されました。
- 秘密保持義務の範囲や競業避止に関するルールの適用が曖昧になるケースが見られました。
- 情報セキュリティリスクの増大:
- 従業員が副業先で知り得た社内秘情報を意図せず、あるいは意図的に漏洩させるリスク。
- 自身のPCやスマートフォンから副業関連の情報にアクセスする際のセキュリティ管理。
- 競合となりうる副業を行う従業員への対応。
- 人事評価における公平性の確保:
- 副業が本業のパフォーマンスに与える影響(ポジティブ・ネガティブ両面)をどう評価に反映させるか。
- 副業での経験やスキルアップをどのように評価し、本業でのキャリア形成に繋げるか。
- 副業を行っている従業員とそうでない従業員の間での評価の公平性をどう担保するか。
課題克服に向けた具体的な解決策
これらの課題に対し、レジリエンスワークス社は関係部署(人事、法務、情報システム、各事業部)と連携し、段階的に以下のような具体的な対策を講じました。
労務管理の壁への対応
- 申請プロセスの詳細化: 副業申請時に、副業先の事業内容、想定される業務量・時間、契約形態(雇用/業務委託など)をより詳細に報告させるようにしました。これにより、会社側がリスクを事前に把握しやすくなりました。
- 労働時間管理の啓発と相談窓口: 従業員に対し、本業と副業を通算した労働時間管理の重要性を改めて啓発するとともに、労働時間に関する懸念や疲労に関する相談窓口(人事部門、産業医など)を設置しました。必要に応じて、産業医面談や休養を促す仕組みも整備しました。
- 秘密保持・競業避止ルールの明確化: 就業規則や副業規程において、秘密保持の対象範囲や競業避止に関する具体的なガイドラインを明確化しました。また、懸念されるケースについては、法務部門と連携して個別に対応しました。
情報セキュリティリスクの壁への対応
- 全従業員向けセキュリティ研修: 副業に関するリスクを含めた情報セキュリティ研修を定期的に実施し、従業員の意識向上を図りました。特に、機密情報の取り扱いや、会社支給のデバイス・システム利用に関する注意点を徹底しました。
- 秘密保持誓約書の再確認: 副業申請・承認時に、既存の秘密保持誓約書の内容を再確認させ、必要に応じて副業特有のリスクに関する誓約項目を追加しました。
- 疑義照会窓口の設置: 従業員が「これは機密情報に当たるか」「副業先でこの情報を使っても良いか」といった判断に迷った際に、法務部門や情報システム部門に気軽に相談できる窓口を設置しました。
人事評価の壁への対応
- 本業のパフォーマンス評価に集中: あくまで本業でのパフォーマンスを評価の主軸とすることを徹底しました。ただし、副業によって得られたスキルや知見が本業の成果や組織貢献に繋がった場合は、その点を評価面談などで適切にフィードバックし、成長を促す材料としました。
- 評価者向けガイドラインと研修: 管理職に対し、副業を行っている部下への評価に関するガイドラインを共有し、公平性を保つための研修を実施しました。評価面談では、副業経験が本業にもたらしたポジティブな影響(例:新しい視点、スキル活用)についても対話する機会を設けました。
- 「成長」を評価軸に: 副業そのものの「成功」を評価するのではなく、副業を通じて本人がどのように成長し、その成長が本業や組織にどう還元されているか、あるいは還元される可能性があるかという「成長プロセス」や「貢献可能性」に焦点を当てるようにしました。
導入による効果と成功要因
これらの粘り強い取り組みの結果、副業制度は従業員に着実に浸透し、当初の目的であった「個人と組織の成長」に貢献する成果が見られるようになりました。
- 従業員の自律性とエンゲージメント向上: 副業制度の利用者は、制度改定前と比較して約30%増加しました。社内アンケートでは、「自身のキャリアを自分で切り開いている感覚がある」「会社が個人の成長を応援してくれていると感じる」といった声が多く寄せられ、エンゲージメントが約10ポイント向上しました。
- スキルアップと知見の還元: 副業を通じてデータ分析スキルを習得した従業員が、本業のマーケティング分析にそのスキルを活かすなど、具体的なスキルアップと社内への知見還元事例が見られるようになりました。これにより、組織全体のスキルレベル底上げにも寄与しています。
- 採用力向上: 「副業OK」という方針が、変化を恐れず自律的に学び続ける人材にとって魅力的に映り、採用活動においてポジティブな影響が出ているという実感があります。
この取り組みが成功した主な要因として、同社は以下の点を挙げています。
- 経営層の一貫したコミットメント: 課題が発生しても、制度の目的(個人と組織の成長)を忘れず、改善に向けた投資や意思決定を迅速に行いました。
- 丁寧かつ継続的な社内コミュニケーション: 制度導入の目的、メリット、ルールの変更点、課題への対応状況などを、全従業員および管理職に対して繰り返し丁寧に説明しました。
- 関係部署間の密な連携: 人事だけでなく、法務、情報システム、各事業部の担当者が定期的に会合を持ち、課題や解決策を共有・検討する体制を構築しました。
- 現場の声を反映した運用改善: 従業員からのフィードバックや管理職からの意見を積極的に収集し、規程や申請プロセス、サポート体制に反映させ、継続的な改善を図りました。
今後の展望
レジリエンスワークス社は、今後も副業制度を「変化に強い個人と組織を育むための重要な制度」として位置づけ、さらなる運用の柔軟性向上や、副業で得られた知見を社内で共有・活用する仕組みの強化を目指しています。また、副業だけでなく、多様な働き方全体を支援するための制度拡充や環境整備にも継続的に取り組んでいく方針です。
まとめ
株式会社レジリエンスワークスの事例は、副業解禁という挑戦的な働き方改革が、導入後の具体的な課題に直面しながらも、丁寧な運用設計、関係者の連携、そして継続的な改善 efforts によって成功へと導かれることを示しています。
副業制度の導入・推進を検討されている人事担当者の皆様にとって、同社の経験は、発生しうる課題への事前準備や、課題発生後の具体的な解決策を検討する上で、 valuable な示唆を提供するものとなるでしょう。多様な働き方は、制度を作って終わりではなく、運用を通じて従業員とともに育てていくものであることを、改めて認識させられる事例と言えます。