株式会社タスクフォース:全社タスク・プロジェクト管理ツール導入で実現した生産性向上と残業削減事例
働き方改革が多くの企業にとって重要な経営課題となる中で、いかにして従業員の生産性を向上させ、同時にワークライフバランスを改善していくかは、人事部門の皆様にとって常に検討すべきテーマかと存じます。特に、業務の進捗が見えにくい、タスクの抜け漏れが発生しやすい、部門間の連携がスムーズではないといった課題は、多くの組織で共通して見られるものです。
本記事では、こうした課題に対し、全社的なタスク・プロジェクト管理ツールの導入というアプローチで解決を図り、生産性向上と残業時間削減という具体的な成果を上げた株式会社タスクフォース様の事例をご紹介します。同社の取り組みから、ツール導入のプロセス、直面した課題、そしてそれをどのように克服したのか、実践的なノウハウと効果測定の参考情報をご確認いただけます。
多様な働き方を導入した背景・目的
株式会社タスクフォース様では、長年にわたり部門ごとに異なるツールや管理手法で業務を進めており、全社的な業務の進捗状況が把握しにくいという課題を抱えていました。これにより、以下のような状況が発生していました。
- 業務の属人化: 特定の担当者しか業務内容や進捗を把握しておらず、担当者不在時の対応が困難。
- タスクの抜け漏れ: 個人のメモやメールでのやり取りに頼るため、重要なタスクや期日の管理が不徹底になることがある。
- 部門間連携の遅延: 異なる部門を跨ぐプロジェクトにおいて、情報共有や進捗確認に時間を要し、全体の進行が滞る。
- 残業時間の常態化: 見込み管理が曖昧なため、期末やプロジェクト終盤にしわ寄せがきて残業が増加する傾向。
こうした状況は、従業員の長時間労働に繋がり、エンゲージメントやモチベーションの低下を招く可能性がありました。そこで同社は、「全社的な業務プロセスの標準化と可視化を通じて生産性を向上させ、従業員のワークライフバランスを改善し、持続可能な働き方を実現する」ことを目的に、全社共通のタスク・プロジェクト管理ツールの導入を決定しました。
具体的な取り組み内容
株式会社タスクフォース様は、上記の目的達成のため、以下の取り組みを実施しました。
- 全社共通タスク・プロジェクト管理ツールの選定と導入:
- 複数のツールを比較検討し、操作の容易さ、カスタマイズ性、既存システム(チャットツールなど)との連携性、セキュリティなどを評価基準に選定しました。
- 選定したツールを全従業員が利用できる環境を整備しました。
- 標準的なタスク管理・プロジェクト進捗管理ルールの策定:
- タスクの登録方法、進捗ステータスの定義、期日設定のルール、プロジェクトボードの活用方法など、全社で統一した運用ガイドラインを作成しました。
- 特に、タスクの粒度や担当者、期日を明確にすることを徹底しました。
- 全社展開と従業員への教育・研修:
- 各部門の特性に合わせたツールの活用方法を説明する部門別説明会を実施しました。
- ツールの基本操作から応用的な活用方法までを網羅した集合研修やオンライン研修プログラムを提供しました。
- 後から入社する従業員や、研修に参加できなかった従業員向けに、eラーニングコンテンツや操作マニュアルを作成しました。
- 運用推進体制の構築と継続的なフォロー:
- 各部門にツールの利用を促進する「推進リーダー」を配置し、情報共有や部門内の疑問解消にあたる体制を構築しました。
- 導入プロジェクトチームが定期的に各部門の利用状況をモニタリングし、活用が遅れている部門への個別サポートを行いました。
- ツールに関する問い合わせを受け付けるヘルプデスクを設置し、FAQコンテンツを充実させました。
- 成功事例の共有と横展開:
- ツール活用によって業務効率が向上したり、プロジェクトが成功したりした部門の事例を全社に共有しました。これにより、他の部門の従業員にツールの活用メリットを具体的に伝え、利用促進を図りました。
導入プロセスと推進体制
導入プロセスは以下の段階で進められました。
- 企画・準備段階(約3ヶ月):
- 全社的な現状の業務課題とニーズの分析(アンケート、ヒアリング)。
- 導入目的・目標(例: 残業時間〇〇%削減、納期遅延率〇〇%改善)の設定。
- ツール選定基準の策定、市場調査、ベンダー候補の絞り込み。
- 社内プロジェクトチームの発足(人事部門、情報システム部門、主要事業部門代表者など)。
- ツール選定・試行段階(約2ヶ月):
- 複数ツールによるデモンストレーション、評価。
- 一部の部門(パイロット部門)でのトライアル実施、フィードバック収集。
- 最終的なツールの決定。
- 導入・展開段階(約6ヶ月):
- 全社運用ルールの策定、ガイドライン作成。
- ツールの全社導入、環境構築。
- 全従業員向け研修プログラムの実施。
- 部門別推進リーダーへの研修と連携強化。
- 定着・改善段階(導入後継続):
- ツール利用状況のモニタリングとデータ分析。
- 定期的なアンケート実施による従業員の意見収集。
- 課題点の洗い出しと運用ルールの見直し。
- 成功事例の収集・共有会開催。
- ヘルプデスクや推進リーダーによる継続的なサポート。
推進体制としては、人事部門が全体計画の策定や従業員への啓蒙・研修を主導し、情報システム部門がツールの技術的な側面をサポート、各部門の推進リーダーが現場での活用を牽引するという、部門横断的な協力体制を構築しました。経営層もプロジェクトの重要性を全社に発信し、強力に後押ししました。
直面した課題と、それに対する具体的な解決策
ツール導入・定着の過程で、いくつかの課題に直面しました。
-
課題1:従業員のツールへの抵抗感や利用のばらつき
- 特にITツールに馴染みのない従業員や、これまでのやり方に慣れている従業員からは、新しいツールの導入自体への抵抗や、「入力が面倒」「余計な作業が増えた」といった意見が見られました。また、部門やチームによってツールの利用頻度やルール遵守度にばらつきが生じました。
- 解決策:
- 丁寧な説明とメリットの強調: ツール導入が単なる「管理強化」ではなく、個々の業務効率向上やチーム連携のスムーズ化に繋がることを、具体的な事例を交えながら繰り返し説明しました。
- 段階的な研修: 一度に全てを教えるのではなく、基本的な操作から始め、習熟度に合わせて応用的な活用方法を紹介する研修プログラムを用意しました。個別質問会やハンズオン形式のセッションも実施しました。
- 推進リーダーによるサポート: 各部門の推進リーダーが、部門内の困りごとや質問にきめ細やかに対応し、気軽に相談できる環境を作りました。
- 経営層からの継続的なメッセージ: 経営層が定期的に「ツール活用は働き方改革推進の重要な柱である」というメッセージを発信し、全社的な取り組みであることを浸透させました。
-
課題2:運用ルールの形骸化や入力情報の不備
- 当初定めた運用ルールが守られず、タスクの期日が未設定であったり、進捗ステータスが更新されなかったりといったケースが発生しました。これでは、ツールを導入しても業務の可視化や進捗管理が十分に機能しません。
- 解決策:
- ルールの簡素化と徹底: 運用開始後にルールの見直しを行い、本当に必要な入力項目やプロセスに絞り込みました。複雑すぎないルール設定を心がけました。
- 定期的なモニタリングとフィードバック: 導入プロジェクトチームがツールの利用状況を定期的に確認し、活用が不十分なチームやルールの遵守ができていない個人に対して、個別にフィードバックや改善の提案を行いました。
- マネージャー層への働きかけ: マネージャーが率先してツールを活用し、チームメンバーにも利用を促すよう、マネージャー向けの研修や説明会を実施しました。評価制度の中で、ツールの活用状況を間接的に考慮する仕組みも検討しました。
- 成功事例の水平展開: ツールをうまく活用して成果を出しているチームの事例を共有し、他のチームの参考にしてもらいました。
導入による効果・成果
全社的なタスク・プロジェクト管理ツールの導入と運用推進により、株式会社タスクフォース様では以下のような具体的な効果・成果が得られました。
- 残業時間の削減: 導入前の平均残業時間と比較し、全社平均で約20%の削減を達成しました。業務の可視化により、計画的な業務遂行が可能となり、期末の突発的な業務集中が緩和されたことが主な要因です。
- 生産性の向上:
- 業務のボトルネックが明確になり、改善活動が進みました。
- 会議における進捗確認時間が短縮され、週あたり平均約1時間の会議時間削減に繋がりました。
- タスクの抜け漏れが減少し、納期遵守率が約15%向上しました。
- 検索性の高いツール上で情報が一元化されたことで、必要な情報の探索時間が短縮されました。
- 従業員エンゲージメントの向上(定性的な変化):
- 自身の担当業務やプロジェクト全体の進捗が明確になったことで、業務への見通しがつきやすくなり、精神的な負担が軽減されました。
- チームメンバーや他部門の業務状況が把握できるようになったことで、連携がスムーズになり、協力体制が強化されました。「チームで目標を達成している」という一体感や達成感が増加しました。
- 残業時間の削減により、プライベートの時間を確保できるようになり、ワークライフバランスが改善されたという声が多く聞かれました。
- オンボーディングの効率化: 新入社員や異動者が、ツール上の情報(プロジェクト、タスク、担当者、ドキュメントなど)を参照することで、早期に業務内容や社内の連携構造を理解できるようになり、立ち上がり期間が短縮されました。
取り組みが成功した要因分析
株式会社タスクフォース様の取り組みが成功した要因は、以下の点が挙げられます。
- 経営層の強いコミットメント: ツール導入が単なるIT施策ではなく、経営戦略としての働き方改革の一環であるというメッセージを明確に打ち出し、必要なリソース(予算、人員、時間)を確保しました。
- 部門横断的な推進体制: 人事、情シス、現場が一体となったプロジェクトチームと、各部門の推進リーダーの存在が、ツール導入から定着までのプロセスを円滑に進める上で非常に重要でした。
- 「ツール導入」だけでなく「使い方・文化」の変革を重視: 単にツールを入れるだけでなく、運用ルールを標準化し、従業員がツールを日常的に活用するための教育やサポートを継続的に行ったことが、定着率向上に繋がりました。
- 成功事例の共有とポジティブなフィードバック: ツールの活用メリットを具体的に示し、活用している従業員やチームを称賛することで、全社的な利用意欲を高めました。
- 継続的なモニタリングと改善: 導入後も定期的に利用状況を分析し、従業員の意見を収集して、運用方法やルールを柔軟に見直したことが、ツールの定着と効果最大化に貢献しました。
今後の展望や継続的な取り組み
株式会社タスクフォース様では、今後もツールの活用を深化させ、さらなる生産性向上と働きがい向上を目指しています。
- データ分析に基づく改善: ツールから得られるデータ(タスク完了率、プロジェクト期間、ボトルネックとなっている業務など)をより詳細に分析し、非効率なプロセスや過負荷が発生している部署を特定し、具体的な改善策を講じる予定です。
- 他システムとの連携強化: 現在利用している他の業務システム(顧客管理システム、経費精算システムなど)との連携を強化し、情報の自動連携やシームレスな業務フローを実現することで、さらなる効率化を目指します。
- AI活用の検討: 将来的には、AIを活用したタスクの自動生成、優先順位付け、リスク予測などの機能導入も視野に入れ、よりインテリジェントな業務管理体制を構築したいと考えています。
- 目標管理・評価との連携: 個人の目標設定やプロジェクトの成果とツール上のタスク・進捗情報を連携させることで、従業員の目標達成に向けた自律的な働き方を支援し、適切な評価に繋げる仕組みを検討しています。
株式会社タスクフォース様の事例は、全社共通のタスク・プロジェクト管理ツール導入が、単なるツールの導入に終わらず、丁寧なプロセス設計、継続的な従業員サポート、そして社内文化の変革を伴うことで、生産性向上と残業削減という明確な成果に繋がることを示しています。これは、同様の課題を抱える多くの企業にとって、働き方改革推進の参考となる事例ではないでしょうか。